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世界の1/3 (3) : メイキングセンス。by 中山慶太

世界の1/3 (3)

2009-06-08 | 視聴覚室

''Depois de carnaval'' Leica M5 / Summicron 35mmF2 / Reala ACE / (C) Keita NAKAYAMA

''Depois de carnaval'' Leica M5 / Summicron 35mmF2 / Reala ACE / (C) Keita NAKAYAMA

特別な能力を持ったひとたちがいる。その能力は努力して得られる場合もあるけれど、たいがいは生まれつきで具わったものだ。でもそれは、いったい誰から授かったのだろう。

ブラジルではある種の女性歌手を「インテルプレチIntérprete」と呼び、その他大勢の歌い手「カントーラCantora」と区別する。カントーラは誰でもなれる、というより女性が歌えばそう呼ばれる。いっぽうインテルプレチとは、曲の背後にある意志や精神性を歌声にのせ、聴き手の心の深い部分に「波動」として伝えられる、そういう特別な歌手を指す。
インテルプレチは「通訳」を意味するポルトガル語だ。なぜそういう呼び名が定着したのか、勝手な想像をすれば、それはこの国の音楽が土着の宗教や儀式と結びついていた頃の名残である。密林のなかで、炎の周りを裸足で踊り、神や精霊の言霊を伝える巫女。現代のインテルプレチとは、その末裔なのではないだろうか。

そういう天賦の才を授かったマリア・ベターニアだが、デビューから十年ほどの間は、まだ「口寄せ」の片鱗を見せるだけであった。もちろんこの時期でも印象に残る作品は少なくない。特に数枚のライヴでは今も色褪せない歌唱を聴くことができる。とはいえ、人間の内面に向けられたその声の輝きは、「聴き手が、意識を持って」探さないと、なかなか見つけられないものである。

capa_78_alibi転機となったのは70年代末に発表した二枚のアルバムだ。1978年の「アリビ Álibi」と、その翌年の「メル Mel」はブラジル国内で大ベストセラーとなり、また国外にも彼女の名を響かせるきっかけとなった。欧米では流行に敏いひとたちの注目を集めたし、日本のメディアが僅かなスペースを割いて紹介するようになったのも、たぶんこの頃からのことだ。

ここでの彼女の歌唱は、それまでの熾火のような抑えたタッチから、より伸びやかなスタイルへと変化している。また選曲やアレンジもより親しみやすく、言い換えれば「ヒット性」を意識したものとなった。「アリビ」に収められた友人ガル・コスタとのデュオ作「ソーニョ・メウ Sonho Meu」などは、それ以前のベターニアのイメージとはずいぶん異なる、突き抜けた明るさを持つ曲である。
この変化は、当時流行のMPB*の流れを汲んだものだ。いわば神殿に仕える巫女が現世(うつしよ)に降臨したような作品だが、商業主義に流された印象がまったくないのは、彼女の歌世界へのディープな入り込みゆえだろう。

こうしてマリア・ベターニアの70年代は成功裏に幕を閉じた。でもそこからの彼女の道筋は、決して平坦ではなかった。やがて発表される大傑作も、その先の混乱の呼び水になってしまうからだ。

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▲photo:カーニバルが過ぎたあとの浜辺で。素足の巫女はクニトウマユミさん。

*注:MPB(Musica Popular Brasileira=ブラジルのポピュラー音楽)はおもに70年代半ばに始まった大衆音楽のスタイルを指す。耳当たりの良いメロディやコンテンポラリーな編曲が特長で、アメリカのAORミュージックの影響を強く受けつつ、逆に影響も与えている。

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