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世界の1/3 (7) : メイキングセンス。by 中山慶太

世界の1/3 (7)

2009-09-14 | 視聴覚室

Olympus PEN E-P1 / Leitz Elmar 65mmF3,5 / Visoflex II / F3.5 1/1250sec. / ISO200 / (C)  Keita NAKAYAMA

Olympus PEN E-P1 / Leitz Elmar 65mmF3,5 / Visoflex II / F3.5 1/1250sec. / ISO200 / (C) Keita NAKAYAMA

「ながら族」という言葉があった。何かをしながら別のことをする、そういう集中力の欠けたひとたちを揶揄した俗語で、もう半世紀も前に発明された。今ではそれが当たり前になってしまって、言葉もとっくの昔に死語の世界。と思ったら、「マルチタスカー」などというお洒落な言い方に変わったらしい。
ひとつのことに専従せずに複数のジョブを同時にこなす、いわば人間もパソコン化しているのかもしれない。
とはいえ、ある種の音楽では「ながら聴き」が積極的に推奨されている。ブライアン・イーノ提唱するところの「アンビエント・ミュージック」がその好例だ。環境に溶け込み、環境を高めるという触れ込みのそれは、識閾下に作用するサブリミナル効果を狙ったもの。まあ平たく言えば理論武装したBGMである。

聞き流されることを目的につくられる音楽もあれば、それを拒否する、というか、聴き手のながら聴きを決して許さない音楽もある。スーパーで買い物をしていても、それが耳に入った瞬間に思わず立ち止まり、耳を傾ける。もしもそうやって反応する客が多ければ、それはBGM失格、選曲ミスといえる。買い物を忘れるくらいなら実害も少ないが、これがクルマの運転中に流れてきたら危険きわまりない。
ということは、かつて「マリア」をはじめてクルマの中で聴いたとき、僕の運転はけっこう危なっかしかったんじゃないだろうか。マリア・ベターニアは、聴く者の心をどこか別の世界に持っていく歌い手なのだ。

アルバム「マリア」の魅力は、曲の良さに増して声の浸透力の強さにある。でも彼女の声がいつでも深いところに届くわけではない、ということは現在流通しているこのアルバムを聴くとよく分かる。オリジナルの13曲11トラック(メドレー2曲を含む)に加え、ボーナストラックとして4曲が追加されているのだが、そちらでのベターニアの歌唱は、何とも耳に心地良く響くのだ。

81その追加された4曲は、ひとつ前のアルバム「12月 Dezembros」から抜き出したもの。シコ・ブアルキとトム・ジョビン共作の「黄金の歳月 Anos Dourados」をはじめ佳曲ぞろいで、トニーニョ・オルタのアレンジはすこぶる流麗、ベターニアの歌もひじょうに巧い。女性ヴォーカルを聴いて「ああ、いい曲だなあ、上手な歌い手だなあ」としみじみしたいひとにとって、「12月」はとても良いアルバムだと思う。
でも僕みたいに、声で心臓を鷲づかみにされたい、なんならピンヒールで踏んでくれてもオッケー、みたいな人間には、この心地よい世界はイージーに過ぎる。だから「マリア」を聴くときはいつも11トラックで止めてしまう。

こういうアルバム毎の落差が激しいのは、マリア・ベターニアの特徴でもあるのだけど、「12月」と「マリア」については時代の影響も見過ごせない。
密林の野生動物のようだった60年代、そして巫女として覚醒した70年代に続く「ベターニアの80年代」は、彼女が商業的にもっとも成功を収めた時代であった。マスセールスを狙った選曲や音づくりが目につくのもこの時代からで、「12月」はそういう企画モノのアルバムなのだと思う。
では彼女の90年代はどうだったのか。

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