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A Day Against the Sun : メイキングセンス。by 中山慶太

A Day Against the Sun

2010-05-14 | 東京レトロフォーカス別室

Leica M5 / Nikkor 35mmF3.5 / FUJICOLOR 100 / (C) Keita NAKAYAMA

Leica M5 / Nikkor 35mmF3.5 / FUJICOLOR 100 / (C) Keita NAKAYAMA

レリーズボタンを押すのが好きである。いや、自分のじゃなくて、他人様のカメラで。

さいきんはめっきり減ったけれど、いぜんはけっこう頻繁にボタン押しを乞われていた。休日の人出の多い場所で撮影をしていると、さあ休憩、というタイミングで、まるで見計らったようにカメラが差し出される。日に三度仰せつかったこともある。こちらの風采から「人品怪しからず」と判断されたのか。違うだろうな。

人選の理由ははっきりしないのだが、記念写真を頼まれるのは悪い気がしない。しかも使ったことのないカメラ(既知の機種を差し出されたことは一度もない。僕がヘンなカメラばかり使ってるからか)をタダで使わせてもらえるとなれば、もう熱烈歓迎の万々歳である。
だから相手が修学旅行のお子さまたちでも、アツアツのカップルでも、初老のご夫婦でもガイジンサンでも、こちらは本気で撮る。「一枚」と言われても必ず二カット。お調子に乗って5〜6カットも撮ったことがあって、フィルムカメラではありがた迷惑だったろう。

そうやってボタン押しを引き受けるのは好きなのに、他人にそれを頼むことは滅多にない。身勝手なものだけど、まあ自分が写るのはフィルムの無駄と思っていることが理由のひとつ。もうひとつには、他人様のウデとセンスを信用していないという、さらに身勝手な理由がある。
べつだん、もの凄く素晴らしい写りを期待しているわけではない。でも乏しい経験に照らして言えば、ほとんどのひとは遠慮があって、だから画面の主題も曖昧で、人物を撮るのか風景を撮るのか、どっちも収めようとするばかりに半端な写真になる。僕なんか、頼まれたら背景の名所旧跡雑踏怒濤はてんで無視して、人物をひたすらでっかく画面に収めるけど、それも迷惑か。

それでも、なかには「これはデキるな」と思えるひともいた。もうずいぶん前になるけれど、イスファハンというイランの街の、とても美しい橋の上で撮影をしていたときに、なんとなく記念写真が欲しくなって、通りすがりのオジサンにボタン押しを頼むと
「お前は太陽を背にして立っている。このカメラは逆の向きでないと駄目だ」
というありがたいご宣託。そのときのレンズは、ここに貼った写真とおなじ単層コートのニッコールだった。オジサンはその街で写真館を営むひとだったのか、またはアッラーのお告げが瞬時に下ったのだろうか。
「いえ、逆光ハレハレでいいんです、それで色が抜けても暗部が浮いても私は気にしません。っていうかそういう写真が好きなんですすみません」みたいなことを言ったかどうか、それはまったく覚えていない。その時に撮った写真を探せば分かると思うけど、あいにく撮り溜めたリバーサルの山に埋もれて、あと5年もしないと発掘の順番が巡ってこないのだ。

大事なカメラを他人に委ねるのは勇気がいる。それが見知らぬ土地であればなおさらだ。だから手渡された側は、持てる知識と技を総動員して相手の信頼に応えるか、または遠目に撮るふりをして一目散で逆方向にダッシュするか、どっちにしても努力しないといけない。いや、いけなかった、と過去形で書くべきか。

雑踏で写真を撮っていて、その休憩のタイミングでカメラを手渡されることも、「押すだけでいいですか」と応じることも、今はめったになくなった。それが自分撮り機能付きカメラの所為なのか、気軽に「撮りっこ」をする習慣が廃れたためなのか、僕にはよく分からない。でも次にそういうチャンスが巡ってきても、たぶん僕は太陽を背にしたひとたちを撮るだろう。
だって、もし露出補正がうまくいかなくても、背面の液晶で確認して撮り直せる。ボタン押しにはいい時代じゃないか。

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▲photo:というわけで、単層コートのニッコールレンズによる逆光ハレハレ写真をいちまい。これは昨日の午後に撮ったもの。部分測光のM5でもこういうレンズで逆光は露出値が狂う(鏡胴内部で発生した迷光が原因)ため、露出は床で取っている。窓の外に見えているのはすれ違う電車。それがマゼンタに転んでいるのは車内の蛍光灯光源を基準にスキャンしたためで、画面右端の壁面にはグリーンの色カブリも残っている。色調はすべて後処理で補正可能、背景の電車ももっと調子を出せるけれど、この写真は小細工抜きがいい。古レンズと逆光は名コンビなのだ。

Special thanks to Mayumi.

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