3.11の花嫁
彼女は「この日と向き合っていくことを決めた」と言った。
それは話せば長いようで、きっとずいぶんシンプルなことだと思う。
多くのひとたちが過去を振り返る日に、前を向いて生きることを宣言する。そのために敢えてこの日を選んだのだろう。
思いつくのはカンタンだけど、実行するのは勇気がいる。誰もが喪に服すことを決めてしまった日を、笑って過ごそうというのだから。
考え方はいろいろあるし、宴のあい間に黙祷を挟めば済むものでもない。
でもそれもこれも、いかにも彼女らしいではないか。今の日本に欠けているのは、心からの笑顔なのだ。そう思いながら、僕も後ろを振り返らず、フィルムに笑顔を収めながら半日を過ごした。
前日の冷たい雨雲も去り、集いの場は軟らかい日差しに恵まれ、そして祝宴の終わりを見届けて、また太陽は姿を消した。まだまだ厳しい日が続くことを、皆に噛んで含めるように。
でもあの日向のかけらを拾って帰ったのは、たぶん僕だけではなかったはずだ。
Special Thanks to MAYUMI.
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