docomo Pro Series L-03C(1)
ボディカラーは迷わず黒を選んだ。
クロとシロ(昔気質の人間はシルバーボディをこう呼ぶ)があったら、たいがいは目立たない方にする。これはいつものカメラ選びと変わらない。特にこの機種の場合、シロはまあなんと言うか、こう、なんと言うかである。
ただし、それ以外のことはいつもとまったく様子が違う。新製品を発売から数日で手に入れたのもはじめてだし、雑誌やWebのレビューも読まず、実写サンプルも見ず、あまつさえ詳しいスペックすら知らずに決めてしまった。ついでに書くと、カメラの入手に店頭で2時間ちかくかかったのも、この機種がはじめてだ。
なんでそんなに時間がかかったのかというと、これは純粋に写真を撮るためだけの道具ではなく、携帯電話と合体したカメラだから。つまりカメラを買ったというより、ケータイを「機種変した」のである。
ドコモL-03Cの存在を知ったのは、母を見舞いに行く電車のなかで、モノトーンの中吊りを見てのこと。その時はすでに発売の翌日で、流行りものに聡いひとたちからは、丸っと二カ月も遅れていたことになる。なんかさいきん、情報弱者だなあ。
その中吊り広告はなかなかイカしたデザインで、新製品のデビューを印象づけることに成功していた。まあ格好がいいと言っても、実機そのものはどこかで見たような、というか、ありていに言えば、リコーGR Digitalのそっくりさんである。
もちろんディテールはだいぶ違う。でもああいう縦横比のボディに、あの扁平なグリップを付けてしまうと、見た目はどう転んでも「ジーアール」になる。老舗のカメラメーカーならプライドが邪魔をしてできないはずだが、ケータイ屋さんはそういう柵(しがらみ)が無い分、身が軽いというか節操がない。

docomo L-03C / Pentax 3X Optical Zoom 6.3-18.9mm F3.1-5.6 / 6.3mm F7.8 1/250sec. ISO400 / (C) Keita NAKAYAMA
帰りの電車でもおなじ広告を見て、それから家に戻るまでの間に入手を決めていた。前のケータイは三年ちょっと使って、メールの早打ちもそれなりにできるようになっていたのだが、いかんせん使わない機能が多い。ワンセグはいちども観たことがないし、他にどんな機能があるかもよく知らない。ケータイで遊ぶ趣味が無いのに、そんな機種を選んだ自分が悪いのだが。
ただし、カメラはよく使った。仕事の打ち合わせとか、取材の合間などにメモ代わりの写真を撮る。だけでなくて、往き帰りの路上に、気になるものを見つけてワンショット。趣味のフィルムカメラだと、鞄から出すのがついおっくうになるところ、ケータイはいつも手の届く懐にある。路上でやらかすなら、刀より匕首(あいくち)なのである。
まあそんなこともあって、ケータイ写真にはけっこう遊ばせてもらっていたのだが、それはやはりモバイルネットワークのなかでのこと。端末の液晶画面で観るには充分以上とはいえ、その世界の外に出す気分には、ちょっとなれない画質だった。
ドコモのサイトで確認したL-03Cは、上に書いたとおりの見た目がちょっとひっかかったけれど、それ以外の部分は僕の注文にかなり応えてくれている。と 言っても、そんなに面倒なオーダーではなくて、気軽に持ち歩けるサイズのちゃんとしたカメラに、通話とメールの機能をつけて欲しかっただけなのだ。

docomo L-03C / Pentax 3X Optical Zoom 6.3-18.9mm F3.1-5.6 / 18.9mm F5.6 1/320sec. ISO400 / (C) Keita NAKAYAMA
そのコンデジ部分だが、サイトで観る限りは、特に気になるところもない。というより、気になる部分がどうなっているのか、よく分からない。カメラメーカーなら必ず書き出してあるスペック、たとえば「撮影感度」とか「35ミリフルサイズ換算のレンズ焦点距離」などが、仕様表にまったく記されていないのだった。
(この項続く)
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▲photo01:見た目はご覧の通りカメラそのもの。「カメラに見えないカメラ」にはそれなりに意味があるが、「ケータイに見えないケータイ」に、果たしてどんな価値があるのか。
▲photo02:機種変の翌日、いきなりのモデル撮影。レンズはペンタックスの銘が付いた三倍ズーム、35ミリフルサイズ換算の焦点距離は35-105ミリ。この写真は広角端で撮影。記録モードは最大サイズ・最高画質、ホワイトバランスは「太陽光」、他の設定はほぼデフォルト。真冬の快晴の夕暮れでかなり派手目の発色だが、AWBならもっと落ち着くはずだ。
▲photo03:こちらは望遠端で撮影。L-03Cのイメージャは1/2.3インチCCD。フルサイズセンサーをハガキ大に見立てると、記念切手にも満たないサイズのセンサーだが、それでも記録画素数は約1200万ある。極小サイズの画素と激狭の画素ピッチでは、ダイナミックレンジがっ、なんてことは「言いっこ無し」。そんなことより問題は、逆立ちしても浅くできない被写界深度で、人物写真をどうまとめるか、である。
Special thanks to Mayumi.
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