Olympus PEN E-P1 (3)
オリンパスE-P1はとても面白いカメラだ。なにが面白いかといえば、そのつかみどころの無さ。眺めて、手にとって、写真を撮って、あれこれ考えて理解したと思っても、次の日にはまた別の疑問が浮かぶ。ようやく了解した気になっても、するりと手を抜ける。そういうカメラは本当にひさしぶりだ。
いや、こんな印象を受けたのは僕だけかもしれない。E-P1は市場でも好評で、じっさいよく売れているという。
基本的な成り立ちはごくシンプル。レンズ交換式のカメラとしてはひじょうにコンパクトなボディ、敢えて光学ファインダーを排した割り切りのユーザーインターフェイス、そして上級の「一眼レフ」と同等の画質性能。それもこれも、マイクロフォーサーズという新規格の特質をフルに活かした結果である。
その規格については、E-P1のカタログに書いてあるように、イメージャのサイズは既存のフォーサーズと同一。ただしフランジバック(レンズマウント基準面とイメージャとの距離)は大幅に縮められ、これがボディの小型化につながっている。それと引き替えに、一眼「レフ」に不可欠な反射ミラーを収めるスペースが無くなり、EVF専用カメラとなった。つまりこのカメラで写真を撮る場合、両手を突き出す以外に方法はない。いや正確には片手でも三脚に据えても撮れるけど、とにかくカメラをおでこに密着させる伝統の構えとは、ほぼ完全に決別している。
もちろん、そういうタイプのカメラは前例がある。家庭用のムービーカメラはもうずっとそのスタイルだし、スチルカメラのコンパクト機でもそれが普通になってきている。だからオリンパスとしても、そろそろ高級機でこの方式が受けいられる素地ができた、と踏んだのだろう。
ちなみにE-P1のレンズを外して暗箱部を観察すると、マウント面からLPFまでの距離は約20ミリ。レンズの後玉が張り出さなければ、ミラーが動くスペースはぎりぎりで取れているようにも見える。微妙なところだが、たぶん可動ミラーを持つカメラは(すくなくとも当分の間は)現れないだろう。精密なメカを持つコンパクトカメラは日本のお家芸だったけど、今は電子的に解決したほうがずっとスマートだし値段も安くできる。マイクロフォーサーズとは、そういう思惑が重なって成立した規格なのだと思う。
そうしたメカマニアックな思い込みは別として、E-P1にはもうひとつ見逃せない特徴がある。新しさと郷愁感が同居するネオ復古調のデザインだ。それはオリンパスの屋台骨をつくった名機(と、その設計者)に捧げたオマージュなのか、それとも。
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▲photo1:デジタルに厳しい光で撮る。こういう条件で暗部側のトーンを基準にすれば、リバーサルフィルムでもハイライトは「素抜け」になる。問題はその白飛びの境目で、ここがきちんとつながって見えないと自然な仕上がりが得られない。イメージャのサイズとダイナミックレンジを関連づけるひとは多いけど、階調の再現性では絶対的な記録幅よりもいかにスムーズにつなげて見せるか、つまり演出のテクニックが大切なのだ。E-P1ではその演出がひじょうに巧みで、オリンパスは写真の絵づくりがよく分かっていると思う。
▲photo2:新しいペンのイメージレンズであるパンケーキ17mm。ちょっぴりクラシカルな外観だが「見た目の解像度重視」という最近の傾向にたがわず、目に痛いほどのピントが出る。ただしそれが写真の完成度に寄与しているかはまた別の問題で、この写真のようにピント面とアウトフォーカス面が遊離して見えることも。個人的にはここまでの解像感はいらないので、もう少し目に優しい立体感と空気感が欲しい。
Special thanks to MAYUMI.
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