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夕暮れの18%(2) : メイキングセンス。by 中山慶太

夕暮れの18%(2)

2012-04-20 | 東京レトロフォーカス別室

Nikon FE2 / Mir-24N 35mm F2 /  FUJICOLOR Superia X-Tra 400 / (C)  Keita NAKAYAMA

Nikon FE2 / Mir-24N 35mm F2 / FUJICOLOR Superia X-Tra 400 / (C) Keita NAKAYAMA

自慢にならない特技ほど、ジマンしたくなるものはない。
そんなプチ芸人的な小ネタは、たぶん誰でも持っている。宴会の余興に披露して、その場がドッチラケになるほど筋がいいという、そういう自爆の甘い香りがする芸のことだ。
僕の場合は、円周率を小数点以下30桁まで暗記している。子供の頃に覚えたままデリートできずにいるのだが、そらんじたところで誰も正誤の判定ができないため、長らく宴会には不向きなネタであった。

じっさい、円周率など無量大数の桁まで覚えたところで、実生活にはただの1ミリも役に立たない。そのいっぽうで、たった二桁の整数について知るだけで、写真の撮影や鑑賞が面白くなることもある。それが野球で言うエースナンバーの、ってもう死語かもしれないが、写真の露出を司る「18%グレー」である。

写真をかじったひとなら、言葉として、または漠然とした概念として知っているだろう。カメラに内蔵された、または単体の露出計は、すべて18%の濃度(より正確には「反射率」)を持つ灰色を基準に調整されている。つまり露出計の針がプラスマイナスゼロを指したところでレリーズボタンを押せば、真っ白な壁でも夜空の暗黒星雲でも、フィルム上には18%のグレーとして再現されるのだ。

この「18」という数字は、写真機材をつくるうえで曲げてはいけない絶対値だから、カメラの露出システムがどれだけ進歩しても、勝手に変えるわけにはいかない。エンジニアのなかには、もう変えたくて辛抱たまらんというひともいるはずだけど、そこに触るとベテランからお目玉を喰らう。
ただし、とはいえ、これはあくまで「理論的に正しい露出の基準」である。ということはつまり、カメラをつくる人にとっては絶対でも、それで写真を撮る側がどう扱うかは、その人の自由なのだ。

Nikon FE2 / Mir-24N 35mm F2 /  FUJICOLOR Superia X-Tra 400 / (C)  Keita NAKAYAMA

Nikon FE2 / Mir-24N 35mm F2 / FUJICOLOR Superia X-Tra 400 / (C) Keita NAKAYAMA

たとえば、ギターのチューニングに使う音叉はA=440ヘルツで振動する。これはISOやJISとは(たぶん)無関係な不文律、いわば伝統という名のデファクトスタンダードである。ではすべてのギター奏者が5弦5フレットのハーモニクスをこれに合わせるかというと、ジミヘンみたいに半音下げてチューニングするひともいる。ロックならなんでもアリだろうって?

いやいや、クラシックの世界でもオーケストラごとに基準ピッチはすこしズレている。また協奏曲でソロを取るヴァイオリニストなんかは、オケのピッチよりすこし高いチューニングにするのが普通だ。ジミヘンとは逆だけど、こうすると音色にテンション感が出て、オケの楽音に埋もれずに済む。つまり「目立てる」のである。

なんだか話のピッチもズレてきたけど、つまるところ表現の世界では「オレ流」が通用するから、世間さまの基準など無視しても構わない。だからカメラにもプラスマイナスの露出補正ボタンがついている。昔は逆光補正くらいにしか使われなかったのだが、今はもっと自由に、撮るひとそれぞれが写真を好みの明るさにするために使っている。
指先で押すだけで、だれでもジミヘンになれる便利なボタン。ジマンになるかどうかは別として、結構なことではないか。

だがしかし。そもそもいったいに、なんでまた18%なのか。

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▲photo1:4月中旬、午後5時過ぎの堤防で。撮影中も周囲はどんどんコントラストが落ちていく。このカットはフィルム上に記録された明暗差がスキャナの読み取り幅とほぼ完全に一致しており、暗部はこれ以上階調を出せない。こういう条件で露出設定を間違えるとかなり悲惨なことになる。
カメラボディには露出補正ダイヤルが付いているが、死ぬほど使いにくいので使ったことがない。ニコンFE2の価値はマニュアル露出の合わせやすさにあるから、AE機能のことなど忘れて構わないのだ(ただし予備の電池は忘れずに)。

▲photo2:上のカットを退きで撮るとこんな感じ。錆びた円柱は堤防工事で河床に打ち込んだ鋼鉄製の基礎。けっこうデンジャラスな状況なのだが、脊山さんは愉しそうにしている。
僕が日没前後の光を好む理由は画面全体のコントラスト感にある。露出がうまく合えば独特の色調が乗って、フィルム写真らしい半透明な仕上がりが手に入る。こういう空気感は後処理ではちょっと出せない。

制作協力:脊山麻理子

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