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水辺からの八葉の写真(2) : メイキングセンス。by 中山慶太

水辺からの八葉の写真(2)

2011-04-10 | 東京レトロフォーカス別室

docomo L-03C / Pentax 3X Optical Zoom 6.3-18.9mm F3.1-5.6 / 9.4mm F3.8 1/320sec. ISO64  / (C)  Keita NAKAYAMA

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お気に入りの桟橋は、いつもゆらゆらと揺れている。
べつだん、普請に問題があるわけではない。それどころか、これは見た目以上に立派なつくりである。鋼管と樹脂の板で組んだ筏のような外観だが、水と接する裏側に大量の空気を忍ば、そこに浮力を宿しているのだ。
遊漁船や屋形船も横づけできる規模だから、乗降客をいちどに載せても沈まない設計だろう。つまり、あわせて何トンの塊が水に浮かぶ。空気と水が反発する力とはたいしたものだ。

桟橋に腰を据えて、川面をじっと見つめる。水の動きはランダムのように思えて、じつはいろんな法則性が作用している。それを分析するのは、流体力学の勉強に役立つかもしれない。でも僕はもっと別の、水面がつくるうねりの形に心を奪われる。そこに、ある法則による相似性が存在しても、おなじ形は二度と現れないからだ。

「人間がつくる芸術は、原則としてすべて複製が可能」だといったのは、ドイツの思想家ベンヤミンだった。彼の初期の著作『複製技術時代の芸術』には、人類がいかにして複製の美を獲得していったか、その技術の系譜が、二十世紀前半の視点で記されている。
ベンヤミンは同著のなかで「アウラ」(真の芸術作品が放つオーラ)の概念を提出し、芸術の「一回性」、つまり、ある瞬間に唯一そこに在ることの価値を説いている。そして、そのアウラの存在を根幹から揺さぶったものこそ、完全な複製が可能な写真技術である、と位置づける。均質なプリントを大量につくれる写真は、真の芸術たり得ない、というのだ。

論理の明晰さと揺るぎのなさ、という点で、同著はかならずしもベンヤミンの思想を代表するものではない。上記の結論を写真に落とす下りなど、今の視点ではつくりの旧さも目立つ。僕らの時代の芸術の在り様、つまり、そろそろ複製とか真贋が意味を失うデジタルメディアを読み解くなら、僕にはユングの共時性「意味のある偶然の一致」の方が。ずっと面白い。
それでも、波間に現れては消えるパターンに重ねて、「複製」や「アウラ」の文字が揺れているように感じたのは、工業規格品の寄せ集めでつくられた桟橋が、波や空の雲などひとの手では複製不能なものに囲まれ、鮮やかな対比を見せていたからに違いない。

複製のよいところは、おなじものがまた手に入るということだ。カメラやレンズなどの道具は、もし手元から去っていったとしても、手に入れるチャンスはまたきっと巡ってくる。だから、そんなものへの執着を捨てて、二度と手に入らないものを探さなければいけない。それは風景でいえば、万物が流転していく様なのだろう。

癒しの水辺も悪くないけれど、そろそろ「ひと」を撮らなければ。波に揺られる桟橋で、僕はそう思っていた。

▲photo01:「舫」。浮き桟橋の片隅で、生き物のようにうねる川面を撮る。夕日がもうすこしゆっくり沈んでくれたら、8ギガのカードが満杯になるまで撮っていただろう。電池が保てば、の話だが。
4対3の縦横比は、ライカ判の3対2よりもずっと絵画的だ。写真らしさが足りない、と思うこともある。 フルサイズ換算約52ミリで撮影。

docomo L-03C / Pentax 3X Optical Zoom 6.3-18.9mm F3.1-5.6 /  6.3mm F7.8 1/250sec. ISO64  / (C)  Keita NAKAYAMA

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▲photo02:「亜鉛鍍金」。浮き桟橋に至る仮設通路。前回の三枚目に似た光の条件だが、あちらがなんとなく整然とし過ぎた気がして、もっと荒々しい写真が撮りたくなって翌日に出向いた。こちらの床面は滑り止めの穴あき鋼板。錆の進行具合から、おそらくタイトルの処理が施されていると推定。そんなことに興味を持つのは僕だけか。
露出はマルチパターン。露出補正ではなくカメラの振りでちょうど良いポイントを探し、そこでAEロックを掛けてから構図をつくっている。コントラストが高い状況ならそういう横着ができる。
フルサイズ換算約35ミリで撮影。

docomo L-03C / Pentax 3X Optical Zoom 6.3-18.9mm F3.1-5.6 /  6.3mm F3.1 1/500sec. ISO64  / (C)  Keita NAKAYAMA

docomo L-03C / Pentax 3X Optical Zoom 6.3-18.9mm F3.1-5.6 / 6.3mm F3.1 1/500sec. ISO64 / (C) Keita NAKAYAMA

▲photo03:「艨艟」。廃棄された桟橋への侵入を阻むバリア。鋼管と槍のような木材、それに有刺鉄線でつくられた強力な「とおせんぼ」。人間相手にここまでやらなくても、と思いつつ、その排他性が獰猛なオブジェをつくっているところが面白い。ベンヤミンが唱えた「アウラ」を宿しているかはともかく、誰が撮っても絵になることは確かだ。
撮影日は春先に珍しい快晴。千切れ雲がふたつ、この位置に来たのは僥倖だった。
空と暗部の境い目には輪郭強調のシュートがついており、このサイズではあまり目立たないが奥行き表現は不足気味。
フルサイズ換算約35ミリで撮影。

docomo L-03C / Pentax 3X Optical Zoom 6.3-18.9mm F3.1-5.6 / 6.3mm F7.8 1/640sec. ISO64  / (C)  Keita NAKAYAMA

docomo L-03C / Pentax 3X Optical Zoom 6.3-18.9mm F3.1-5.6 / 6.3mm F7.8 1/640sec. ISO64 / (C) Keita NAKAYAMA

▲photo04:「夕凪」。この日のモデルさまはユリカモメ。おなじ場所でおなじような写真を撮って飽きないのは、空の表情で写真が違うものになるから。観てくださるひとは、きっと飽きているだろう。
前回の写真と違って、この日は太陽の周辺の白飛びに色相のジャンプが出ていない。たぶん空気中の水分で光のスペクトルの現れ方が違うとか、そういう理由だと思う。カメラの描写は撮り続けてみないと確かなことはいえない、という例。
フルサイズ換算約35ミリで撮影。

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