FUJICOLOR 100(3)

'' Jack-o'-Lantern '' Leica M5 / Voigtländer Nokton 50mm F1.1/ F1.1 / 1/4sec. / FUJICOLOR 100 / (C) Keita NAKAYAMA
この数日間、とあるカメラの仕事で借用した大口径レンズで。
コシナ製フォクトレンダーも、最初期の製品に比べると質感と感触は大幅に向上している。青味が強く感じられた発色はほぼニュートラルになったし、鏡胴は剛性感のある素材が使われ、エッジ部分の仕上げも微妙な柔らかさを感じさせるようになった。まあ工作については昔のレベルに近づいたとも言えるので、「向上」と書くのも変ではある。
それにしても、レンジファインダー機にとっての大口径レンズとは、いろいろな意味で矛盾を孕んだ存在だと思う。
まず、SLR用レンズほど近接がきかない(このレンズをはじめ、コニカ製の限定ヘキサノンF1.2も本家のノクチルクスもすべて最短は1メートル)。人物撮影などで極薄の被写界深度を駆使した「お約束のボケボケ描写」をイメージすると、ちょっと裏切られるかもしれない。また太い鏡胴はファインダーのケラレが大きく、作画に支障をきたすことが多い。約1段ほど暗いF1.4、たとえば現行のズミルクスを選べば最短は30センチ縮まるし、ケラレもあまり気にならなくなるのだ。
そして(レンズ設計者にとってこのスペックがチャレンジングであることを承知しつつ)このスペックでレンジファインダー用ダブルガウスレンズを設計する場合に、SLR用に比べて僅かに短いバックフォーカスによる描写性能の向上が、どれだけの人に感知できるか、ということ。
いや、こんなことを書くのは、たぶん野暮というものだろう。このレンズの開放でも暴れの少ない端正な描写は、コシナ50周年に相応しいものだし、覗くと吸い込まれるような前玉は、カメラ好きならずとも魅了されると思う。大口径は実用性ではなくロマンで選ぶべきレンズ、つまりV12エンジンのようなものなのだ。
こういうレンズは、やっぱりフィルムで撮りたい。
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