LUMIX GF1(2)
過日、モータースポーツ系カメラマンの方々にお話を伺う機会を得た。高速移動するレーシングマシンを長玉で追うという、ある意味カメラの限界性能を引き出して仕事をするひとたちだから、話は滅法面白い。某社のカメラはあの部分がよく壊れるとか、ここではちょっと書けないネタもぽんぽん飛び出す。
で、ひたすら感心しながら聴いていると「僕らはすごく狭いところで仕事をしているから」という。仕事部屋が狭いという意味ではなくて、カメラ機能の限られた部分しか使わないということだ。
レース専門のひとたちはちょっと極端だけど、プロの写真家は誰もがカメラの使い方を限定している。それはより良い写真を撮るためというより、仕事を失敗のない方法で確実にこなすためである。今のカメラの機能をぜんぶ使うひとはまずいない。
僕にしても多点測距とか分割測光、評価露出などは仕事で使ったためしがない。でもクルマ系のひとたちにはそれが必需品だそうで、だからカメラの評価で一般論というのは、ほんとうは成り立たないものなのだ。
そういうことを実感したのが、パナソニックGF1のMF(マニュアルフォーカス)アシスト機能である。これはピントを手動で合わせる場合に、ピントリングを回すとファインダー画像が5倍に拡大される(10倍表示も可能)というもの。十字キーの操作で拡大位置を移動できるので、微妙なピント合わせが可能になる、とメーカーは主張する。
同様の機能は他のLUMIX Gシリーズやオリンパス・ペンE-P1にも付いていて、これはつまりEVFだけのカメラが、光学ファインダーほど厳密なピント合わせができないことの裏返しとも取れる。
さてこのMFアシスト、カメラを三脚に据えて動かないものを撮る場合なら、とても便利に感じるだろう。でも僕のように手持ちで動く対象を追うことの多い人間にとっては、正直、あまり使いたくない機能である。拡大表示は撮影後のピントチェックには便利だけど、画面全体が見わたせない状態でレリーズすることはまずありえない。それならピントが怪しい写真を撮っていた方がマシだ。
もちろん、これはカメラの致命的な欠点というわけではない。GF1のコントラストAFは、ほとんどの場合に問題なくピントが合うから、MFの出番はそう多くないのだ。ただ困るのはマウントアダプターを介してMFレンズを装着した場合で、これはE-P1でも難渋した。絞れば目測で使えないことはないけど、絞りが自由に選べないのはやはり不便。しかもマウントアダプター付けると、MFアシストも効かなくなる。
と、そういうことを今度出たPhoto NAVIの「GF1の本」に書いたら、書店に並ぶ直前にこの点がファームアップで改善され、接点のないレンズでもアシストが効くようになった。提携するライカ用のアダプターを純正供給するメーカーとして、パナソニックは責任を果たしたということだろう。たぶんオリンパス(OMアダプタを出している)も追随するはずだ。ただ、GF1にしてもE-P1にしても、合焦をサインで知らせる「フォーカスエイド」を積んだ方が、ピントのアシストとしてはずっと使いやすいと思う。その場合の測距点は中央一点固定で構わない。僕らはずっとそうやって写真を撮ってきたのだ。
こんなことはメーカーもよく分かっているはずで、でもそれをやらないということは、コントラストAFの機構になにか問題があるのだろうか。
まあ、こんなことに不満を感じるのは僕だけかもしれない。カメラは使うひとによって求める機能が違うので、すべてのユーザーの要望に耳を傾けていたらメーカーは大変なことになる。もしそういう対応ができたとしても、それでカメラが良くなるとは限らない。ちょっぴり不便なところを工夫しながら撮ることが、趣味の写真にはプラスに働く場合だってあるのだ。
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▲photo:目測でピントを外すのが怖い場合、別のカメラの距離目盛りを読んで移す手もある。でもカメラが一台しかなかったら? 最終兵器「巻き尺」の出番だ。下の画像はたんに距離を測っているところのオフショット。これがなかなかイケる気がしたので、ちゃんと絵をつくったのが上の写真。これだけで撮り手と被写体の関係性がなんとなく変わって見えるから写真は面白い。
Special thanks to MAYUMI.
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