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Grain -粒状-(2) : メイキングセンス。by 中山慶太

Grain -粒状-(2)

2012-05-30 | 東京レトロフォーカス別室

Konica Autoreflex T3 / Hexanon AR40mmF1.8 / FUJICOLOR Superia X-Tra 400 / (C) keita NAKAYAMA

Konica Autoreflex T3 / Hexanon AR40mmF1.8 / FUJICOLOR Superia X-Tra 400 / (C) keita NAKAYAMA

見た目はあまり変わらないのに、目方が違う。
これは春先のキャベツなんかによくある話だ。ちょっと見でおなじように見えても、手に持てば重さにかなり差がある。なんでかといえば、単純に「巻きが違う」、つまり密度に差があるのだ。
だから店頭でひとしきり悩む。季節ものとしては巻きの緩い方が上等で、ふわりとした食感が楽しめる。でも値段がいっしょなら、重い方を買った方が得じゃないか?

まあそういう台所の話はさておき。写真でも似たような経験をすることがある。ほとんどおなじ絵柄でフィルムとデジタルを撮り分けたとき、いざデータを保存する段になって、重さがまるで違うのだ。
もちろん縦横のピクセル数はだいたい揃えてある。だから極端な違いが出るはずがないのだが、何度やっても結果はいっしょ。いったいなぜだ。

懸命な読者諸兄はすでに察しがついていると思うが、僕はしばらく考えて、ようやく理由が分かった。これはJPEGの画像圧縮の原理と、フィルムの粒状の関係でそうなるのだ。

Konica Autoreflex T3 / Hexanon AR40mmF1.8 / FUJICOLOR Superia X-Tra 400 / (C) keita NAKAYAMA

Konica Autoreflex T3 / Hexanon AR40mmF1.8 / FUJICOLOR Superia X-Tra 400 / (C) keita NAKAYAMA

JPEGに代表される画像圧縮は、隣り合うピクセル同士にほとんど差がない場合、それをひとまとめにして扱うことで、データ容量を軽くしている。厳密には違うものでも、おなじものと見なすのは、たとえば箱に詰められたトマトみたいなもの。一つひとつのサイズが違っても、ある等級の中に収まっていれば、それはおなじトマトと見なされ、おなじ箱に詰めて出荷される。
画像圧縮もそれといっしょで、強めにかけるほど「出荷管理が甘くなる」。だから強めの圧縮をかけたデータは精細度が低くなるのだけど、そのぶん軽くなるから、メール添付やストレージが楽にできるわけだ。

さてそこで、なぜフィルムとデジタルで差が生じるのかというと、フィルムには粒状性というものがある。雲ひとつない空を撮ったとしても、高倍率で拡大すれば粒々が並ぶ様子が見えるはずだ。フィルムをスキャンすると、この粒(グレイン)の並びによって、隣り合うピクセル同士の差が大きくなる。結果、画像圧縮で「ひとまとめにできるデータ」の総量が少なくなり、データが重めになるのだった。

まあそんなわけで、ファイングレイン=粒状性の良いフィルムというのは、たんに画質が高精細になるだけでなく、ストレージの点でも有利である。小粒でサイズが揃ったトマトなら、小さい箱にもたくさん入るのだ(もちろん非圧縮で保存すればフィルムでもデジタルでもデータ量に差はない)。

粒状を細かく保つには、なるべく低感度のフィルムを使う。おなじ感度なら多めの露出をかける。こういう基本を守っていれば、おなじ容量のハードディスクでも保存できる画像の枚数に差が出るだろう。
ただし露出を多めにかけすぎると、今度はスキャナの読み取りでノイズが増えて、却って逆効果になる。粒状とS/N比の相関を考えれば、露出倍数は適正からプラス2段程度。僕のスキャナではそのあたりが限界だ。

Konica Autoreflex T3 / Hexanon AR40mmF1.8 / FUJICOLOR Superia X-Tra 400 / (C) keita NAKAYAMA

Konica Autoreflex T3 / Hexanon AR40mmF1.8 / FUJICOLOR Superia X-Tra 400 / (C) keita NAKAYAMA

というようなことを、撮影時に考えつつ露出を決めるのは、言ってみれば八百屋の店頭でキャベツを両手で量るようなもの。そんなことを気にしながらレリーズするひとはいないと思うけど、まあフィルムというのは「巻きのきついキャベツ」のようなものだと、今さらながらに思うのであった。

ちなみに僕は春キャベツでも、間違いなく重い方を選ぶ。食感は調理法である程度、自由になるからね。

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▲photo1/photo2:撮影後はいつもお食事タイム。とみせかけて、カメラはいつでもスタンバイ状態。店に入るときから、背景や光線の状態が良い席を選ぶ。こういうのは撮り手の習性か、山を探って大きいトマトを選ぶ男の貧乏性か。余談だけどこれをやるなら、フィルムは撮り切らずに数コマ残しておくこと。
下の画像はほぼフルフレーム、上はそこから15%を切り出したもの。感度400のフィルムでも、露出倍数を多めにかけると粒状はほとんど目立たない。髪の部分が潰れ気味なのはハレーションの影響(暗部の濃度が出ていない)だろう。ヘキサノンAR40ミリ、絞り開放。クニトウさんが頬張っているのはケサディーヤというメキシコ風ピザ。

▲photo3:上とおなじ条件で、すこし退きで撮る。光線は天井の人工光源(たぶんハロゲン球だろう)と画面右側の窓からの自然光。雨天の夕暮れなので自然光は青味が強く、すこし補正してちょうどいいミックス状態になった。ヘキサノンAR40ミリはこういう条件だと開放でも鮮鋭で、例の軟調描写はほどほど。なかなか正体をつかみにくいレンズである。
粒状とは別の要素として、撮影時の絞り設定は閉じるより開いた方がデータ量は軽くなる。理由はこの背景を見ればすぐに分かると思う。これももちろん副次効果に過ぎないのだが、写真はいろんな要素が絡み合ってひとつの絵をつくっているので、それを細かく分析するといろんなことが見えてくる。

制作協力:クニトウマユミ

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