再会
Nikon FE2 / MC Mir-24N 35mmF2 / Superia X-Tra 400 / *trimmed / (C) keita NAKAYAMA
とあるパーティーの席で、懐かしい顔に出逢った。
彼女を撮っていたのは数年前。はじめて見かけたのはその１年くらい前で、その頃に僕が出入りしていた店で働く姿が、とても印象的だったのだ。
写真の被写体をお願いしようと思いつつ、声もかけないうちに彼女は店を辞めてしまった。よくあることだ。普通ならそこで縁が切れてしまうのだけど、このときは切れかけた糸を繋いでくれるひとがいて、連絡を取ることができたのだった。
一度目に再会した彼女は、予想に反して日焼けした顔で現れた。前のお店で働いていたときには昼夜が逆転した生活だったので、隠花植物のような面持ちだったのが、新しい仕事に就いて、すっかり健康的になったのだそうだ。
イメージとちょっと違うといえば、思ったより小柄なこと、そしてハスキーな声でよくしゃべることもそうだった。でも被写体としての存在感は予想通りで、きっと誰が撮ってもいい写真になると、そう思いながら撮っていたのが数年前のことだ。
そこでなぜ撮影が途絶したのか、それはよく覚えていない。たぶん以前にやっていた連載が打ち切りになり、そこから創作のペースを取り戻すのに、僕もずいぶん余分な力を使ったためだと思う。写真を撮る意欲が失せたわけではなく、ちょうど「空腹なのに、食べる力が湧かない」状態だったのだろう。
Nikon FE2 / MC Mir-24N 35mmF2 / Superia X-Tra 400 /(C) keita NAKAYAMA
二度目に再会した彼女は、いぜんと少しも変わらず、ただ肌の色がちょっぴり濃くなったように思えたけれど、本当のところはよく分からない。僕は被写体とある一定の距離をおくことにしているので、普段の彼女がどんな生活をしているのか、まったく知らないのだ。
パーティーが引けたあとに、会場の周辺で数カット撮らせてもらう。時間にしてほんの数分。そのわずかな間に、彼女は完全に写真に入り込んでくる。写真に「入る」というのも妙だけど、人物を撮るひとには、きっと分かってもらえるはずだ。撮る側と撮られる側が、何かを共有するあの感覚。それを掴むのに苦労する場合もあれば、そうでないこともある。
別れ際に次の撮影をお願いすると、彼女はとっておきのしゃがれ声で「いつもそういって連絡、くれないんだから」。おやおや、そうだったっけ。またひとつ反省のネタが増えたと思いつつ、でも手にしたカメラには、いい写真が詰まっているという確信があった。
けっきょく写真とは、被写体の力がすべてである。少なくとも僕の写真は、いつだってそうなのだ。
Special thanks to TeTe.
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