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Tea Break : メイキングセンス。by 中山慶太

Tea Break

2011-06-16 | 東京レトロフォーカス別室

docomo L-03C / Pentax 3X Optical Zoom 6.3-18.9mm F3.1-5.6 /  6.3mm F3.1 1/125sec. ISO64  / (C)  Keita NAKAYAMA

docomo L-03C / Pentax 3X Optical Zoom 6.3-18.9mm F3.1-5.6 / 6.3mm F3.1 1/125sec. ISO64 / (C) Keita NAKAYAMA

偶然に頼ってばかりでは、進歩がない。ああ、まったくそのとおり。
なぜ進歩が必要なのかといえば、人間はもう森に戻れないからだ。祖先が怯えて過ごした、あの暗い森には。

人類は火を扱うすべを身につけることで、暗闇と決別した。火を畏れずに操る能力は、どんな道具にも増して、種の保存と繁栄に役立ったことだろう。それは敵を打ち倒す武器になり、また威嚇や防御にも有効だった。
火を手にしたことで、人間が本来そなえていた能力を失っていったことも、安定した社会の形成に役立ったはずだ。強大な力は、それを管理するうえで不可欠な権力と統制を生み出した。それによってもたらされた秩序は、あの森の中に存在する摂理とは、すでに相容れないものだった。

火は学問の対象でもあった。火工術”pyrotechnics”は、こんにちでは「花火や映画の特殊効果など、火薬を扱う技術」の総称になっているけれども、かつては軍事目的で、為政者が御用学者を囲って研究にあたらせる最重要機密だった。歴史の本にはあまり出て来ないが、唐の時代の黒色火薬よりもずっと前、ギリシャやベルシャ、アラビアの国々では火薬をもちいた兵器が盛んに開発されていたという。

学問とは、偶然から必然を導き出すプロセスのことである。より強い火力を持つ燃料や、より強い光を放って燃える物質は、偶然に見いだされた事象に、分析と改良を加えた結果もたらされたものだ。その意味で、火工術は錬金術”alchemy”の仲間でもある。

「もしも十字軍による遠征が失敗に終わっていたら」という仮定がある。中世ヨーロッパの暗黒時代による科学技術の停滞は生じず、産業革命は数世紀早く興き、今どきの人類はとっくに火星に住み着いていた、かもしれない。錬金術も王侯貴族の道楽ではなく、優秀なアラビアの数学者たちによって、物理学の中心に置かれ発展していただろう。
確かに魅力的な仮説だが、時計の針と地球は逆回転をしないことになっている。科学技術も人間の本能を超えて進むと、間違いが起きやすい。核エネルギー利用が数世紀も前に実用化されていたら、地球は今の形をとどめていただろうか。

今僕らが手にしているカメラにしても、かつての錬金術や火工術でもたらされた知恵が、めぐりめぐって形を成したものである。闇を畏れる本能を完全に失う前に、僕らは暗闇でも撮れる道具を手に入れた。そうやって技術が進歩していくことで、闇の正体が明らかになる日が来るかもしれない。自らの内面を写す勇気が備われば、いつかきっと。

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