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AZABU十番勝負(4) : メイキングセンス。by 中山慶太

AZABU十番勝負(4)

2011-01-13 | 東京レトロフォーカス別室

Konica IIIA / Hexanon 50mm F1.8 /  Kodak BW400CN / (C)  Keita NAKAYAMA

Konica IIIA / Hexanon 50mm F1.8 / Kodak BW400CN / (C) Keita NAKAYAMA

さいきん、またコニカIIIAを持って歩くことが増えている。
正直、レンズの描写が格別に優れているわけでもなく、咄嗟のスナップを撮りやすいわけでもない。というより、これはスナップ的な撮り方にはあまり向いていないカメラである。

まず、露出の設定がやりづらい。レンズ鏡胴にインテグレートされたLV=ライトバリューのシステムは、光の変化に即応することがむつかしく、設定値の変更にはどんなに慣れても3秒くらいはかかる。
そのLVの利点は、「絞りとシャッター速度の組み合わせを、露光値を一定に保ったまま瞬時に変えられる」こと。これは後年のAEで一般化するプログラムシフトのようなものだから、確かに便利には違いない、でもIIIAの方式はやはり煩雑で、シャッターと絞りのリングを指先で押さえながら同時に回すやり方、たとえばミノルタALなんかの方がずっと使いやすい。

この時代の国産カメラの悪しき風潮である、無闇矢鱈なレンズの大口径化も、普通に撮る分にはさほど恩恵を感じない。原型となったコニカIIIのレンズ「ヘキサノン48ミリF2」より、ほんの僅かに増した明るさの代償として、絞り全域でコントラストはやや低めとなり、絞り込んだ状態での尖鋭性も後退している(ような気がする。まあ、僕には充分以上の性能だ)。

Konica IIIA / Hexanon 50mm F1.8 /  Kodak BW400CN / (C)  Keita NAKAYAMA

Konica IIIA / Hexanon 50mm F1.8 / Kodak BW400CN / (C) Keita NAKAYAMA

にもかかわらず、僕がこのカメラを好きなのは、ライカなどでは近接時に画角の誤差が生じる視野枠を、律儀に補正しようとしたほぼ等倍のファインダーと、そのファインダー機構を収めるために肥大化した軍艦部の、素晴らしく上質なメッキに覆われた、ややグロテスクな意匠が魅力的に思えるためである。
あの日本刀のように鋭利で美しいコニカIIIのオリジナルデザインを崩してまで、設計者が追い求めたもの。それは、写真撮影とその道具をめぐる趣味世界が、まだまだ「大人の、大人による、大人のための」ものだった時代に、知恵と工夫と見栄を総動員して、そうした趣味人の要求に応えようとした、あの時代の日本のカメラ設計者たちに共通した理想ではなかったか。

コニカIIIAの垂直巻き上げはストロークが二回。最初の一回はレリーズ直後に、もう一回は次のレリーズ直前に行う癖をつけると、咄嗟のチャンスにも強くなる。僕がそんな当たり前のことに気づいたのは、麻布十番から暗闇坂を登り、横道に逸れたあたりの散歩道で写真を撮った午後のことだった。

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Special thanks to Mayumi.

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