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Vice Versa(1) : メイキングセンス。by 中山慶太

Vice Versa(1)

2009-12-25 | 東京レトロフォーカス別室

Leica M5 / Biogon 35mm F2 /  Kodak BW400CN / (C)  Keita NAKAYAMA

Leica M5 / Biogon 35mm F2 / Kodak BW400CN / (C) Keita NAKAYAMA

デジタルの仕事が一段落して、撮り溜めたフィルムの整理をしている。
フィルムの弱点、というかデジタルに比べて不便な点は、撮影結果の確認に時間がかかるところだ。以前はそれを不便と思わなかったのだが、アタマのなかで水が低い方に流れてしまったらしい。
僕の場合、趣味の撮影はネガカラー主体で、現像は近所のミニラボに持ち込んでいる。以前は絵柄とピントの確認のため同時プリントを依頼していたのだが、用済みプリントの処分に困って「現のみ」に切り替えた。これで出費は半減したものの、手間はますますかかるようになった。

いやいや、この程度のことで愚痴をいったらバチがあたる。写真が発明されて170年、その長い歴史の大半を支えてきたモノクロは、自家現像と引き延ばしという二重の手間がかかるのだ。
モノクロ主体で撮るひとは僕の周囲に少なからずいて、そういうひとたちの口から愚痴がこぼれることは滅多にない。ネガカラーで楽をしている僕など、相変わらず小僧の部類である。

だからというわけではないが、このところカメラにモノクロを詰める機会が増えている。フィルムでモノクロを撮るだけなら、ネガカラーから色を抜くという手もあるけれど、思うようなトーンを出すのはむつかしい。これはネガカラー特有の広いラチチュードが裏目に出るためで、そのまま焼くと思いっきり眠い絵になる。
おなじネガでもモノクロの場合、見栄えの良いコントラストが作り込まれているため、焼きやすい反面ラチチュードはカラーよりもずっと狭い。多少のミスはプリントでカバーできるけれど、粒状感とトーンを両立させるなら、露出はリバーサル以上に気を遣う必要がある。しかも光の条件によってはまるで絵にならない。不便を快感にすり替えるには、やはりこれがいちばんの偽薬だろう。

Leica M5 / Biogon 35mm F2 /  Kodak BW400CN / (C)  Keita NAKAYAMA

Leica M5 / Biogon 35mm F2 / Kodak BW400CN / (C) Keita NAKAYAMA

モノクロ写真の奥の深さは、撮影後のプリントワークでいくらでも絵をつくれるところにある。撮影時の作業は料理でいえば下ごしらえみたいなもので、「本番は暗室に籠もってから」というひとも多い。ただ僕みたいな仕事をしていると、なかなかそういう時間が取れないので、さいきんは明室処理に置き換えて作業をしている。フィルムスキャナとパソコンでつくった絵をプリンターで出力するわけだけど、まあ邪道というか、結果は本来の暗室作業とは似て非なるものになる。
僕もこの方法をいろいろ試してみて、印画紙の偉大さを思い知らされた。乳剤の内側から染み出してくるようなあの質感は、表面からインクを吹き付けてつくる方法では絶対に得られない。これはもともとの原理の違いだから、この先に技術の進歩で差が詰まったとしても、並ぶことはけっしてないだろう。

だから明室処理は駄目、というひともいるけれど、僕はそういう風には思わない。おなじ結果を得ようとするから駄目なのであって、さいしょから別のものと割り切ればいいんじゃないか。考えてみればデジタルとフィルムも事情はいっしょ、いや新しいレンズと旧いレンズでもそういう部分はある。それぞれの特性がうまく活きるような方法を考えれば、表現の方法がさらに増えるのだから、これは簡単に諦めるわけにはいかない。

Leica M5 / Biogon 35mm F2 /  Kodak BW400CN / (C)  Keita NAKAYAMA

Leica M5 / Biogon 35mm F2 / Kodak BW400CN / (C) Keita NAKAYAMA

などと書くといかにも前向きだけれども、悩みはいろいろある。いちばんの問題はフィルムスキャナの性能に限界があること。これはネガカラーの処理でも感じていることだけど、特にモノクロの場合、フィルムが持っている情報をマシンがきちんと読み取れていない。メーカーがモノクロに力を入れないのはデジタルカメラでもいっしょで、ユーザーの声が届いていないのか、または声が無視されるほど小さいのか。モノクロやってるひとたち、大人だからなあ。

残念ながらスキャナはフィルム専用機の開発がほぼストップした状態で、高画質型の新製品はフラットベット機しか出てこない。唯一の砦ともいえるニコンにしても、商品の整理が進んで淋しい限り。フィルムの特性を熟知した富士フイルムが、ミニラボ機の技術を民生機に載せて出してくれたらと思うのだが、今の市場を眺めると可能性は限りなくゼロに近い。
まあ悲観的なことばかり書いてもはじまらないので、ここではもう少し前向きに、今ある機材でできる明室処理のことを書き留めていくことにしよう。例によって更新は散発的になるはずだが、お付き合いいただければ幸いである。

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▲photo1:快晴のお盆休みに鋼鉄の橋で撮影した素材。フィルムはコダックのBW400CN。いわゆる色素タイプのモノクロで、ネガカラーとおなじC41現像処理ができる(つまりミニラボで処理が可能)。モノクロフィルムの中では軟調の部類(イルフォードXP2sほどではない)だが、ネガカラーよりはずっとコントラストが高い。これはほぼストレートに処理したもの。

▲photo2:全画面の約25%をトリミング。肌のトーンをここまで乗せても粒状感が損なわれないのは色素タイプならでは。レンズのビオゴンZMはこの光の条件だと髪が硬調になり過ぎ、また左の背景もここまで調子を出すと粒状がもろに出てくる。ここでは部分的にフィルター効果を入れて補正した。こういうことができるのは明室処理ならでは、ただしやり過ぎると合成写真みたいになるので要注意。

▲photo3:上とは逆の考え方で、肌のトーンが残るぎりぎりのところまでハイキーに振った。背景と画面の四辺は飛ばしている。ハイキーな写真は立体感が後退して平面的になるので、シャドー部の階調は意図的に残してある。右側の髪のコントラストはもう少し高くしたい、などとディテールにこだわって、つい振り出しに戻りたくなるのがモノクロの怖いところ。僕みたいな性格だと一生アガれない。

Special thanks to MAYUMI.

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