Canon EOS 7D (2)
EOS 7Dの印象をひと言で記せば「ヴァーサタイル」。キヤノンはこのカメラに「イメージモンスター」というキャッチコピーをあてているけれど、僕にはむしろ“多能”を意味するこちらの言葉がしっくりくる。
ヴァーサタイル性というのは、一眼レフがその出自から持ち続ける資質であって、それを最新の技術で突き詰めたお手本のようなカメラ、それが7Dである。
この「何にでも使える」万能性は、ある種理想のように思えるものの、こと趣味性という括りでは必ずしもそうならない。加えて、いつもおなじ対象を追っている人間、つまり僕のような撮り手には、機能を省いたシンプルなカメラの方が使いやすかったりする。
キヤノンも流石にそのことはよく分かっていて、このカメラは高度なカスタマイズが容易にできる。全部のメニューをここに列記すると疲れそうなので止めておくけれど、まずほとんどの撮り手の希望に添うと思って間違いない。つまり限りなくオートクチュールに近いプレタポルテ。ただし採寸はご自分で。
そういうカメラをつくりあげた技術に感服しつつ、でもそれで過去のカメラたちの魅力が失せたかというと、そうとも言えないのが写真趣味の面白いところだ。たとえて言えば、品数豊富なレストランと夫婦経営の小料理屋のどっちが美味いか、みたいな。まあそういう話は置いておいて、ここではちょっと別の話をしよう。このカメラで誰もが興味を持ちそうな話題、イメージャのサイズである。
EOSデジタルとしては三番目となるシングルナンバー「7」を割り当てられたことで、キヤノンがこのカメラにかける意気込みは並々ならぬものと知れる。そのいっぽう、「ひと桁はフルサイズ機」というお約束? が崩れたことに、ちょっと失望したひとも多いのではないか。
実は僕もそのひとりで、7Dというカメラが出るのなら、それは5Dをスペックダウンした廉価版フルサイズ機を期待していた。ところが実際はその逆で、7は5を上回るほどの機能を持つAPS-Cの最高峰として登場したのだ。
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▲photo:今回のロケは山奥。こういうロケーションで快晴は何よりだが、高すぎるコントラストは作画上の制約も多くなる。一世代前までのデジタル機なら撮る気になれなかったこんな条件でも、ごく自然な階調が得られるところが素晴らしい。水際の撮影で7Dの防滴構造はとても心強いけれど、それを活かせるレンズがまだ少ないのはちょっぴり残念。
レンズは明るい方の35mm。ズームの性能向上が著しい昨今でも、単焦点にはやはりそれなりの良さがある。それは画質性能だけでなく可搬性と取り回しとファインダーの明るさ、そしてなにより撮っていて愉しいこと。被写体との間合いを考えながら撮る楽しみは捨てられない。
ピクチャースタイル=ニュートラル、ホワイトバランス=オート、絞り優先AE+スポット測光。
Special thanks to ERIKO.
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