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Fatto a Mano Chianti!!(1) : メイキングセンス。by 中山慶太

Fatto a Mano Chianti!!(1)

2014-12-12 | 東京レトロフォーカス別室

(C) Keita NAKAYAMA

(C) Keita NAKAYAMA

さいしょのグラスを揺すっていると、黄金色の液体が語りかけてきた。

「ボンジョルノ。気分はどうだね?」

あわてて周囲を見回したけれど、その声は他の誰にも聴こえていないようだ。僕は安心して、小声で挨拶を返す。

「ボンジョルノ、いい気分ですよ。あなたはどうですか」

「ああ、とてもいい気分だ。こうして新鮮な空気に触れるのは、なにしろ久しぶりだから。ところで今は何年? ここはどこかな? ずいぶん広い場所のようだが」

「今は西暦2014年の11月、場所は東京の赤坂にあるホテルです。今日はこのバンケットルームで、キャンティ協会のセミナーが催されているんですよ」

「ははあ、なるほど」グラスの声はこの場の状況をなんとなく理解したらしい。「それなら私の造り手や、仲間のワインたちもいっしょだろう」

「ええっと、来日している造り手は、ぜんぶで36社ですね。このセミナーでは8種類のヴィン・サントを利くことになっています」

「おやおや」グラスの声はすこし呆れたように言った。「甘口のデザートワインの利き比べかね。日本のワイン文化も、また大人に・・・いや立派に成長したものだ」

「どうでしょうね」僕はグラスに口を寄せて耳打ちした。「たぶん講師の林茂さんが、話題性をつくるために知恵を絞ったんだと思います。キャンティの奥深さを紹介しようと。ほら、林さんは今も演壇で、あなたたちのことを丁寧に説明してくれています」

「ああ、よく聴こえているよ、立派な紹介だ。しかしワインの集まりにしては、またずいぶんと静かだが」

もういちど周囲を見回すと、ずらりと並んだテーブルでは大勢の業界関係者とプレスが頭を垂れ、講師の言葉に無言でペンを走らせている。確かにこれだけ静かなワインセミナーの風景は、たぶん日本だけのものだろう。

「まあ熱心なのはなによりだが、私たちワインは絵画のようなものでもある。だから寄り過ぎると全体が見えなくなるよ。あの天才の失われた壁画も、フィレンツェの五百人広間 Il Salone dei Cinquecento という空間に合わせて描かれたものだった」

「レオナルドの “アンギエーリの戦い La Battaglia di Anghiari” ですね。まあ日本人は狭い茶室の襖絵に慣れていますから、細部へのこだわりが強いのかもしれません」

「ふむ、面白いな。それならひとつ、どうだろう」と、黄金色の声はそこで猫なで声にトーンを変える。

「今日は私と仲間たちの話もいっしょに聴いてみてはどうかな。ワインをただ利き比べるだけでは、キャンティを、いやイタリアを識ることはできないよ」

彼の言葉の「識る」とは、「知る」よりも対象を深く理解するという意味らしい。そいつは願ってもない申し出だ。僕はつかの間、ヴィン・サントの精たちとおしゃべりすることにした。

***

取材協力:イタリア大使館貿易促進部/キャンティDOCG協会 Consorzio Vino Chianti

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