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Appendix_02 : メイキングセンス。by 中山慶太

Appendix_02

2014-06-18 | 東京レトロフォーカス別室

Nikon FE2 / Mir-20N 20mm F3.5 /  Speria X-TRA 400  / (C)  Keita NAKAYAMA

Nikon FE2 / Mir-20N 20mm F3.5 / Speria X-TRA 400 / (C) Keita NAKAYAMA

「ただなんとなく」は、一度っきりしか使えない。

こんなことをよくもまあ臆面もなく言えたものだと、我ながら呆れる。でも電話の向こうの旧友は妙に納得していたから、それなりの説得力はあったのだろう。ある作家とその作品のドラマツルギーについて話していて、その場の思いつきが口に出ただけなのだが。

思いつきといえば、ここに載せている写真のロケ場所を選ぶときもたいがいに、そういう軽いノリである。季節と天候という神様に相談すれば、あとはモデルさまが仏の心でスケジュールを合わせてくれる。仕事の撮影ではそうもいかない(さいしょに予算と日程の制約がある)から、趣味とは自由で贅沢なものだ。

ただし今回はめったにない例外で、そこに行くだけの理由があった。このサイトを中断しているあいだに、撮りたいと思いながら撮らなかった写真があり、その宙ぶらりんのままのイメージに区切りをつけておきたかったのだ。撮らなかったことにも理由はあるが、「なんとなく」で終わらせるわけにはいかない。

その写真は、遮るもののない空の下で、超広角で撮るはずだった。用意したレンズの銘柄「ミール」は宇宙ステーションの名前としてもおなじみだ。ソ連はこの名称(ロシア語で「平和」または「世界」の意)を宇宙計画に重ねていたようで、ミールと名のつくレンズはスペースカメラでも活躍したという。

Nikon FE2 / Mir-20N 20mm F3.5 /  Speria X-TRA 400  / (C)  Keita NAKAYAMA

Nikon FE2 / Mir-20N 20mm F3.5 / Speria X-TRA 400 / (C) Keita NAKAYAMA

社会主義国家が宇宙を目指す、そのきっかけをつくったひとりに、ロケット工学の先駆者ツィオルコフスキーがいる。彼は1920年ごろの書簡にこんな言葉を遺している。

”大地は人類の揺りかごだが、我々はいつまでもそこで揺られているわけにはいかない”

ここに込められた意味は、ミール20を装着したカメラのファインダーを覗けば了解できる。およそ無辺の視野に覆い被さる空は、地球と宇宙を隔てる天蓋である。ゆらゆらと揺られる日々の安寧から抜け出そうとするものは、その蓋を自ら切り裂かねばならない。そうして外界に身を晒したとき、ひとの存在は塵のように小さく、そして個人の悩みや哀しみなど、さらにちっぽけだと知れるだろう。

宇宙計画からこぼれ落ちたレンズを手に、偉大な科学者の言葉を頭に浮かべながら、僕は蒼と黄土色のあいだで写真を撮っていた。――It’s not I’m so lonely, just because.

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▲photo04/photo05:既出のカットを焦点距離およそ50ミリと35ミリでトリミング。この撮影距離で50ミリの画角はちょっと窮屈だが、ディテールはさすがによくわかる。いっぽう35ミリは見た目に自然で、これはこの焦点域が人間の視野角に近い画角を備えているため。肉眼の見え方に一致する焦点距離は43ミリくらいという話だが、対象を注視せずにいるときの視野は「これくらい」という気がする。

マユミさんが被っているのは韓国の農楽ヨルトゥバルに使われる舞踏用の帽子。長く伸びた縄ひもには穴空き硬貨が結わえてあり、これが錘りの役目を果たす。ほんらいはこの先に白のリボンを結び、それを身体を揺らして振り回して、新体操のリボンのような軌跡を描いて踊る。これはいぜんにソウル市内の楽器屋で見つけたもの。つくりはとても丁寧でしっかりしている。

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Nikon FE2 / Mir-20N 20mm F3.5 /  Speria X-TRA 400  / (C)  Keita NAKAYAMA

Nikon FE2 / Mir-20N 20mm F3.5 / Speria X-TRA 400 / (C) Keita NAKAYAMA

▲photo06:既出カットとおなじもので、これがフル画面=完全ノートリ。このアガリを眺めていて「荒れ地に棲むカエル」のイメージが浮かび、そこからストーリーをひろげていった。今回の撮影ではいちばん好きな写真だ。

フラットな背景が画角を意識させないが、上の2点と比べると超広角の画面効果は明らか。写真のマジックを実感できると思う。撮影時はなるべく俯瞰めの視点とするため、低い踏み台の上に立ってカメラを構えている。これで適切な角度を得たものの自分の影を切るのに難渋した。レンズをもうすこし下に振れば自分のつま先が写りそうだ。

画面の四隅には通常の光量落ちとはべつの、急峻な減光がある。これはミール20Nに特有の癖で、絞っても解消されないところから、フランジによるケラレを疑っている。設計時点(60年代)ではモノクロが主体で、画面周辺は多少なりともマスクされるため、この程度の問題は瑕疵とされなかったのだろう。僕もあまり気にしていない。

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制作協力:クニトウマユミ

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