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Artisan’s Gear : メイキングセンス。by 中山慶太

Artisan’s Gear

2011-04-21 | 東京レトロフォーカス別室

Konica Acom-1 / Hexanon AR57mmF1.4 / Kodak Portra 160VC / (C) Keita NAKAYAMA

Konica Acom-1 / Hexanon AR57mmF1.4 / Kodak Portra 160VC / (C) Keita NAKAYAMA

ひとは、自分にないものに憧れる。
単純だけど、そこにはひとつの真理がある。いやなんとなく、そんな気がする。

僕がすごく憧れるのは、職人のワザだ。それも、いっけんどこが凄いのかよくわからないけど、じっくり噛み締めるとすごく旨いという、いわばアミノ酸系の職人芸。ミュージシャンでいえば、コーネル・デュプリーやドナルド“ダック”ダン。という名前でピンと来なければ、「スタッフ」のギタリストと「ブッカーT&ザ・MG’s」のベーシスト。そう書くと、分かるひとには分かってもらえるだろう。
特にダック・ダンが弾く“Melting Pot”のベースライン、あの何分の一拍か遅れでズシッと来る、ボディブローみたいな音のうねり。あれは僕にとって究極のグルーヴだ。

このふたりに共通しているのは、R&B系のセッションを数多くこなしていること。かつて日本でスタジオ職人ブーム起きたとき、彼らの知名度も上がったのだが、人気はいまひとつだった。本国では売れっ子だったはずだけど、プレイスタイルが渋過ぎたのか、見た目に難があったのか。

ところで、スタジオまわりでたくさんの仕事をこなす職人たちは、仕事場にも多くの楽器を持ち込み、曲調に合わせて弾き分ける。そんなイメージを抱くひとも多いだろう。

Konica Acom-1 / Hexanon AR57mmF1.4 / Kodak Portra 160VC / (C) Keita NAKAYAMA

Konica Acom-1 / Hexanon AR57mmF1.4 / Kodak Portra 160VC / (C) Keita NAKAYAMA

でも実際にそういうことはなくて、たいがいはお決まりのギターやベースを一本、多くて二本を提げて、ぶらりとスタジオに現れる。これは運ぶのが面倒ということもあるだろうけど、たぶん仕事に呼ぶ側も「身ひとつ、楽器ひとつ」しか求めていない。
それは依頼主(たいがいはプロデューサー)が、「この曲には、アイツのあの音」というイメージで呼んでいるためだ。

とあるセッションに、遅刻してきた職人いわく「いやあ、愛用のギターがクルマごと盗まれちゃって」。でもじつは、男と逃げたカミさんに持ち逃げされていた。そんなのはよくある話で、それでパチモンの楽器を使おうが、イメージ通りの音でプレイしてくれればそれでいい。
つまり楽器の音色よりも、人間そのものが奏でる音楽が優先される。考えてみれば当たり前だが、職人とは職分が進んだ分野の、つまりスペシャリスト中のスペシャリストである。何でも屋さんなど、ハナから求められていない。

そうかと思えば、職人の対極に位置するミュージシャンもいる。ステージに所狭しとギターを並べて、曲ごとに持ち替えて弾くひとたちだ。ビミョーな音の違いへのこだわりが強いのか、たんなるこけ脅しか、それとも税金対策か。理由はどうあれ、運んでチューニングする裏方さんはたいへんだろう。ダブルネックなんか、一本で三本分の手間だもんな。

Konica Acom-1 / Hexanon AR57mmF1.4 / Kodak Portra 160VC / (C) Keita NAKAYAMA

Konica Acom-1 / Hexanon AR57mmF1.4 / Kodak Portra 160VC / (C) Keita NAKAYAMA

楽器ごとの音の違いは、もちろんある。ヴァイオリンのような手工品はそれが前提だけど、量産品の電気楽器にもバラつきはあって、旧いものや、安価な品ほどその振れ幅は大きい。
そこでいろいろと弾き比べてみて、音に特徴のある楽器を揃えていく。それが楽器趣味の面白さだ。さいきんはネットショップやオークションで買うひとも多いみたいだけど、試奏なしで愉しいのだろうか。

いっぽう職人の場合は、「自分の売り物になる音はこれ」と決めているから、そういう音が出る楽器だけを選りすぐる。つまり趣味の対象ではなくショーバイ道具。ただし入手した楽器にはものすごく気を遣って、細かい部分のセッティングを詰めていく。
弦の銘柄やゲージ(太さ)、それを張る高さとか、ネックの微妙な反り具合。そういう部分がすべてぴたりと決まると、彼らは一本の楽器から、無限の色彩を引き出してみせる。人間の指は、道具からどれだけ多くのものを引き出せるのか、その最高の例が、スタジオミュージシャンの職人芸には、ある。

まあ、そんなこんなで、僕は楽器を弾く職人たちに憧れている。でもそれは、「美味しいところで美味しい音を出す」ひとたちへのリスペクトで、いわば客席で飲みながら拍手する立場での愉しみだ。
これが演奏する側だったら、いつもの音はもう飽きた、偶には違うスタイルでプレイしたいぜっ、みたいな気持ちにも、なるかもしれない。それとも、そうはならないのが職人なのか。

Konica Acom-1 / Hexanon AR57mmF1.4 / Kodak Portra 160VC / (C) Keita NAKAYAMA

Konica Acom-1 / Hexanon AR57mmF1.4 / Kodak Portra 160VC / (C) Keita NAKAYAMA

じっさい、よく分からないのだけど、でも旧いカメラから引き出せる画像について、僕はどれだけ知っているだろう。フィルムの銘柄や、それに合わせた撮影感度のずらし方。微妙な手ブレの加え方。そしてなにより、その場の光を読んで画面に階調を与えるやり方。この道具には、もっといろんな可能性があるんじゃないか。

写りの違いを銘柄や機種名に重ねて語る。それはカメラ雑誌などがずっとやり続けてきた方法論で、なにも間違ったことではない。集めた機材は眺めて愉しいし、触っても充実感がある。
でもそろそろ、一台のカメラの使い方、撮り方をもっと突き詰めてみるべきだ。それを続けていけば、ほんとうに気に入ったカメラだけを選んで、手元に置ける日が来るかもしれない。

さいきんはそう思っている。

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Special Thanks to MAYUMI.

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