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Days As Usual(6) : メイキングセンス。by 中山慶太

Days As Usual(6)

2011-07-03 | 東京レトロフォーカス別室

docomo L-03C / Pentax 3X Optical Zoom 6.3-18.9mm F3.1-5.6 /  6.3mm F3.1 1/45sec. ISO100  / (C)  Keita NAKAYAMA

docomo L-03C / Pentax 3X Optical Zoom 6.3-18.9mm F3.1-5.6 / 6.3mm F3.1 1/45sec. ISO100 / (C) Keita NAKAYAMA

街頭で、ひとにカメラを向けなくなって久しい。
理由はいくつかある。ひとつは、例の肖像権の問題。これはいろいろな問題を孕んでいるのだが、突き詰めて考えると、今の状況はある意味「まとも」である。誰だって無断で写真を撮られて、知らないところでひと目に触れたら、いい気持ちはしないだろう。
とはいえ、被写体の承諾を得てから撮るやり方だと、自分が惹かれた情景はけっして手に入らない。デジタルなら「とりあえず撮ってから、相手に承諾を求める」やり方もできるのだが、それも不躾な気がする。

もうひとつ別の理由として、人物を撮るときは「撮る側と撮られる側の関係性」がないと、面白くない。相手にカメラを意識させながら撮ることで生まれる、緊張感。それを乗り越えたときに得られる充足感。人物を撮る醍醐味って、それに尽きるんじゃないか。

そんなことを考えるようになってから、街頭スナップには興味が失せてしまったのだけど、さいきんはまた別の欲求が出てきた。きっかけは、例のコンデジケータイを愛用するようになって、それがようやく身体の一部のようになってきたこと。
「カメラまかせで撮れるのだから、簡単だろう」と言われそうだけど、それが実はぜんぜんそうじゃない。路上で動く被写体を追うときなどは、特にむつかしい。露出補正をどれだけ手早く済ませても、微妙なタイムラグがあるために、「一拍遅れ」の写真ばかり撮ることになる。そこでわずかに早くレリーズする。この時間差感覚を身につけるのに、数ヶ月かかったというわけだ。

docomo L-03C / Pentax 3X Optical Zoom 6.3-18.9mm F3.1-5.6 /  6.3mm F3.1 1/45sec. ISO100  / (C)  Keita NAKAYAMA

docomo L-03C / Pentax 3X Optical Zoom 6.3-18.9mm F3.1-5.6 / 6.3mm F3.1 1/45sec. ISO100 / (C) Keita NAKAYAMA

「そんなに面倒なら、もっとちゃんとしたカメラを使えばいい」うん、それはそのとおり。手元にあるカメラなら、M型ライカなんかを使えば、狙った瞬間をほぼ確実に切り取ることができる。むしろコンデジのタイムラグ補正が習慣化してしまうと、「ちゃんとしたカメラ」では早めにレリーズすることになりそうで、怖い。

でも、思うに、街頭スナップとは、どれだけ頑張っても完全な絵が手に入らないジャンルである。巧く撮れたと思っても、後で見直すと必ず瑕疵がある。見事なバランスを百発百中で手に入れるひともいるけれど、僕にそんな芸はない。
だからこそ、なるべく完全に近い道具を使う。それも方法論としては正しいのだが、まかり間違って巧く撮れた場合に、機械に手柄を奪われているようで面白くない。むしろ半端な道具の足りない部分を補いながら撮っている方が、画面への集中力が出て楽しい。つまり、僕にとっての街頭スナップとは「ダメもと写真」なのだ。
だが、写真ってもともとそういうものではなかったか。

なにもかもが便利になり過ぎた時代に生きていると、不便さの裏にひそんだ意味を忘れてしまう。人間とはもともと不完全な生き物で、それを道具で補いながら、なんとか完全に近づこうと努力する。街角で途往くひとに気兼ねなくレンズを向けられた昔には、撮る側にもそんな懸命さがあった。
そういう懸命さを、僕はもういちど取り戻そうと思っている。

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