Sheltering with HEX’s(1)

2012-05-09 | 東京レトロフォーカス別室

Konica AutoS1.6 / Hexanon 45mmF1.6 /  Ferrania Solaris FG Plus 100ISO / (C)  Keita NAKAYAMA

Konica AutoS1.6 / Hexanon 45mmF1.6 / Ferrania Solaris FG Plus 100ISO / (C) Keita NAKAYAMA

雨の日にレンズ3本で出かけた。

銘柄はすべてコニカ製ヘキサノン。焦点距離は35ミリから45ミリまで、ちょうど5ミリ刻み。今ならズームリングを「ちょっぴり回すだけ」で済むから、こんな組み合わせを持ち歩くひともいないだろう。ただしこの焦点域だと画角差はちゃんと出る。

3本のレンズがズームと大きく違うのは口径比だ。エフイチロクからエフニまで、こちらもちょうどコンマ2刻み、単焦点ならではの明るさである。製造年は60年代半ばから70年代後半。国産レンズが成熟期に差し掛かった、いわばヴィンテージ期のレンズたちだ。

この3本に限らず、僕は旧いレンズでの撮り比べは、あまりやったことがない。なぜかというと、写真レンズの性質は、ある限られた条件ではほんの少ししか見えないからだ。
レンズごとの描写の差はもちろんある。設計が旧ければ旧いほど、その違いを看て取るのもたやすい。でもじっさいに写真を撮っていると、そういう性能差よりも、むしろフィルムやその場の光の方が、画質を左右する力はずっと強いと思う。

そんなわけで、手元に来たレンズはさいしょに基本的な性質だけ確かめて、あとは会話を楽しむ気分でつき合うことにしている。ようするに横着なだけか。
まあそういう事情はさておき、写真と写真機に興味を持つひとたちにとって、レンズはやはり特別な興味の対象だろう。好奇心を塞ぐ蓋はなかなかみつからないものだし、モノに凝るのは趣味の正しいありようではある。

Konica AutoS1.6 / Hexanon 45mmF1.6 /  Ferrania Solaris FG Plus 100ISO / (C)  Keita NAKAYAMA

Konica AutoS1.6 / Hexanon 45mmF1.6 / Ferrania Solaris FG Plus 100ISO / (C) Keita NAKAYAMA

ここで使った3本も、写真機好きにはよく知られた製品だ。といっても、ぜんぶ使ったことがあるひとは、そんなに多くないと思う。コニカのカメラ製品は相対的にボディの存在感が薄い。レンズが濃い、という考え方もあるけれど、このバランスがとれていないと愛用者はなかなか増えない。だからどうする、といっても、今さら遅いのだが。

今回は個々の性質の違いを知るために、ちょっと厳しい条件で撮ってみた。旧レンズの鬼門といえばピーカンの逆光。でも実は雨や曇りの光もおなじくらいに厳しいものだ。

▲photo1 / photo2:ヘキサノン45ミリF1.6は60年代後半の「オートS1.6」が積んだレンズ。同機は大柄なレンジファインダーシリーズの最終進化型、というより、間違った方向に進化した種の、最後の生き残りであった。レンズは原型の「オートS2」に使われたF1.8を再設計し、この時代の市場が求めた大口径化を果たしている。
スペック上はわずかな違いでしかないが、ダブルガウスのレンズ構成は後群に1枚追加された5群7枚。前玉サイズも拡大された(ただし鏡胴径は不変)。

実写の印象はスペック以上に異なる。特に絞り解放付近のコントラストはF1.8よりもずっと低く、解像感はあるが立体感に乏しい。今回の撮影では雨天の弱い光とプラス1段半の露出、それにフェラニア・ソラリス100の相乗効果でその性質を強調、顔料っぽい不透明な色調で絵をまとめた(晴天ならもっと普通の写りだ)。2枚の画像は上が調整後、下はノーマル処理である。

Konica Autoreflex T3 / Hexanon AR40mmF1.8 /  FUJICOLOR Superia X-Tra 400 / (C)  Keita NAKAYAMA

Konica Autoreflex T3 / Hexanon AR40mmF1.8 / FUJICOLOR Superia X-Tra 400 / (C) Keita NAKAYAMA

▲photo3:ヘキサノンAR40ミリF1.8。オールドレンズファンにはお馴染み、パンケーキの名玉である。この焦点距離でこの明るさは今でもレコードホルダーだろう(ただし実焦点距離は約43ミリ)。このスペックはコニカ製一眼レフの短いフランジバックと独創的な設計の賜物、という話は以前に書いた
レンズはそれからモデルのクニトウさんに貸し出していたのだが、カメラボディのAcom-1が壊れたため目出度く出戻り。小型軽量機はやはり弱い? 今はサイズが不釣り合いなT3で使っている。

描写は独特。特に絞り解放からニハチあたりまでの軟調描写は絶品で、その性質を人物撮影に活かすひとも多い。といっても快晴の屋外などではわりあい普通の画質。そういう条件だと逆光でのゴーストも目立つ。このレンズの特質を活かすなら、やはり屋内や曇天のような軟らかい光で撮りたい。
このカットは絞り開放で撮影。画面全体にごく軽いソフトフォーカス効果が確認できる。ニッコールDCレンズと同様の、球面収差によってもたらされる効果である。こういう描写が好きなひとにとっては、たいへん魅力的なレンズと思うが、絞りが事実上1段刻みでしか使えないのが難点。また実用にはフードが必須、今回も雨粒よけに深めのフードを使ってコンパクトさを活かしきれなかった。

Konica Autoreflex T3 / Hexanon AR35mmF2 /  FUJICOLOR Superia X-Tra 400 / (C)  Keita NAKAYAMA

Konica Autoreflex T3 / Hexanon AR35mmF2 / FUJICOLOR Superia X-Tra 400 / (C) Keita NAKAYAMA

▲photo4:ヘキサノンAR35ミリF2。基本設計は60年代半ばに遡る大口径広角レンズで、コニカ製一眼レフのほぼ全時代にわたって供給された。僕の手元にあるのは70年代半ばのプロダクト(反射防止膜は多層化されている)。絞り開放でもピントは繊細、コントラストの低下も目立たない。ちょっと大柄だが良いレンズだ。

このカットはphoto1の45ミリとおなじ条件で撮ったもの。フィルムと露出の違いを差し引いても画質差は大きい。この時代の広角レンズは解像性能を誇示するような玉が多いなか、人肌感を自然に出すところがヘキサノンAR。強烈な個性には欠けるが安心して使える。
45ミリのカットと比べると、焦点距離が短く開放値も暗いのに被写界深度は浅い、これは単純に撮影距離が短いためで、そういう狙いなら「寄れるカメラ」は「明るいレンズ」よりも絵づくりの幅がずっと広い。オートS1.6のようなカメラが絶滅したのは、レンジファインダー機の特質とバランスを無視したためである。

制作協力:クニトウマユミ

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