Smile Please

docomo L-03C / Pentax 3X Optical Zoom 6.3-18.9mm F3.1-5.6 / 6.3mm F3.1 1/180sec. ISO64 / (C) Keita NAKAYAMA
被写体に笑顔を要求したことは、いちどもない。
それはたぶん、僕自身、カメラに微笑むのが苦手だからだ。自分ができないことを被写体にお願いするのは、気が引けるでしょ。
笑顔に限らず、カメラに向かって表情をつくるのは、けっこうむつかしい。むつかしいからこそ、それがちゃんとできるひとは、プロのモデルとして仕事が来る。カメラのこちら側の立場でいえば、被写体の表情を上手く引き出せるか否かで、仕事量が決まる。
でもそういうプロ同士のワザが合わさってできた笑顔というのは、なぜだか魅力に欠けることが多い。なんというか、予定調和みたいなお約束感が、どこかに残ってしまう。まあ広告の笑顔なんかは、それも織り込み済みなんだけどね。
思うに、魅力的な被写体とは、おなじ表情を二度しないものだ。素敵な微笑みも憂いも、ふと見せたと思ったら、次の瞬間にはもう消えている。だから慣れないひとは、どこでレリーズすればいいか、けっこう迷うだろう。
写真を(ある意識を持って)撮ることをはじめたころには、それで僕もずいぶん迷った覚えがある。「あっ」と思ったときにはもう遅い。「あ」が脳に伝わる前に指が動いていないといけない。もちろん人間は尻尾を踏まれた草食恐竜とは違うので、そんなことはできっこないのだけど、表情が「来た」と知覚してから反応するのでは、間に合わない。そういうものだ。

docomo L-03C / Pentax 3X Optical Zoom 6.3-18.9mm F3.1-5.6 / 6.3mm F3.1 1/750sec. ISO64 / (C) Keita NAKAYAMA
そうやって以前は迷いの連続だったのが、いつの間にか「しまった」と思わなくなった。これは反射神経が研ぎすまされて、レリーズする指の反応時間を縮めることができたから、ではない。むしろ寄る歳なみで、タイムラグは大きくなっていそうだ。
理由はよく分からないのだけど、被写体の表情の変化に「ついていけるようになった」のは、たぶん呼吸を上手く合わせることができるようになったためだと思う。表情を引き出すのではなくて、そういう空気をいっしょにつくる。他のひとはどうやってるのか知らないけど、僕はそういう撮り方が好きだ。
そういえば、さいきんのデジカメには「スマイルショット」みたいな機能を積んだ機種が増えている。僕のコンデジにもついている。使ったことはないけど、たぶん便利なものだろう。
ピントも露出もシャッターチャンスもぜんぶ機械に任せて、撮り手がやることは他になにかあるのか。それもきっと取説のどこかに書いてあるはずだ。
制作協力:脊山麻理子
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