Tea for Two

2010-10-27 | 東京レトロフォーカス別室

Contax RX / Yashica ML 35mm F2.8 /  FUJICOLOR Reala ACE / (C)  Keita NAKAYAMA

Contax RX / Yashica ML 35mm F2.8 / FUJICOLOR Reala ACE / (C) Keita NAKAYAMA

熱に浮かされた夜に、朦朧と浮かぶ窓辺。
”Reserved”の札が置かれた席は、いつまでも空きのまま。
閉店の刻が近づいても、二人は現れない。

古株のウェイターがときおり問われる。
あの席はいつ来ても予約済みだね、と。
彼は小首をかしげ、いつもきまった言葉で返す。
「私が勤めたころから、ずっとあのままなんです」
それならオーナーが訳を知ってるだろう、と訊かれ
彼は、薄らと笑みを浮かべて、こう答える。
「オーナーは変わりました。もう三度も」

怪訝な顔をする客に、わけ知り顔の老人が、こんな話を聞かせる。

「あの席は、まだ出逢っていない二人が予約しているんだ。
惹かれあっていても、見えない線が二人をけっして近づけない。
求めても、受け入れない。はじまりが終わりになることを怖れているから」

「人生によくあるすれ違いだって? そうかもしれない」

「でもいつかきっと、境界が消えてなくなる日がやってくる。
そうしたら、あの窓辺で、はじめての君に出逢おう。
そんな想いで待ち続けることは、誰にだってあるだろう」

老人はそう語り、三人分の伝票を手に席を立つ。
いつもの窓辺を振り返りもせずに。

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Special thanks to M.

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