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2009-06-11 | 東京レトロフォーカス別室

''HERO'' Contax RX / Yashica ML35mmF2.8 / Reala ACE / (C) keita NAKAYAMA

''HERO'' Contax RX / Yashica ML35mmF2.8 / Reala ACE / (C) keita NAKAYAMA

友人がギターを買った。べつだん珍しくもない話だが、買ったギターはかなり珍しい。60年代に活躍した白人ブルースマンのシグネイチャー・モデル。つまり愛器の精巧なレプリカだという。
なんでも「本人がチューニングギア(糸巻き)を別のものに交換した、その余分なネジ穴まで忠実に再現」というのが殺し文句らしい。自慢話のネタがプリインストールされているわけだ。
といっても、フツーのひとがそういう改造をすると、どんなに史実に基づいていても、楽器の値打ちは確実に落ちる。中古で売る場合は買いたたかれるだろう。でもメーカーが純正でやると付加価値がつく。鑑定書付きの贋作みたいなものである。
アホらしいといえばそうだし、楽器ビジネスも狭いところに入ったなあ、と思う。でもまあそれで友人が神と崇めるミュージシャンに近づけ、カミさんに隠れてギターを弾くモチベーションが湧くのなら、結構なことだ。やっぱり道具には夢がなくちゃね。

夢の話といえば、さいきんのカメラはどうだろう。流石に「ロバート・キャパ・シグネイチャー」みたいなモデルが出るという話は、今のところ聞いていない。どころか、画質は年々向上、機能も年々倍増、もう昔のカメラなどどう逆立ちしても勝ち目はない。はずなのだが、どうにも夢が実現したという実感がない。というか、「このカメラなら、きっとこんな写真が撮れるゾ」という妄想がかき立てられないのだ。こちらが不感症になっているのか、それとも。

新しいものを否定するつもりはまったくないので、きちんと理由を書いておこう。僕は写真の道具に三つのことを求めている。それは効率と画質と趣味性だ。
効率はおもに仕事の道具としての条件で、発注者からの要求をどれだけスムーズに満たせるか、ということ。具体的には迅速性と正確性と確実性だ。これには最新の機材がいちばんフィットする。
画質はちょっとむつかしい。心に思い描くイメージを再現してくれる機材が理想だろうけれど、それは撮る対象や状況によって変わるし、光学性能の優劣とは必ずしも一致しないからだ。とはいえ最新の機材がイメージに合うなら、僕は迷わずそっちを選ぶ。
最後の趣味性については、実はそれほど執着がない。もちろん旧いカメラの質感や触感には抗しがたい魅力もある。でもそういう欲求は、夜中に自分の部屋で弄るだけでじゅうぶん満たされる。実用性ゼロ、写真が撮れないカメラでもいっこうに構わない。

そういう理詰めの? 条件とは別に、旧いカメラを積極的に使いたい理由もある。こればかりは最新機材では満たされない、というかゼッタイに相容れない。それは道具としての不完全性と不自由さ、言い換えれば「お金で買える夢を見せない」ことなのだ。

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▲photo「ヒーロー」:とある冬の夕暮れ、街角で強面のバイク乗り氏に遭遇。愛車のエンブレムを背負った後ろ姿があまりに魅力的だったので、被写体をお願いした。カメラに装填のフィルムはISO100が残り数コマ。使える絞りとシャッター速度の組み合わせは手ブレの安全マージンを切っている。

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