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エモノ -favorite weapons-(2) : メイキングセンス。by 中山慶太

エモノ -favorite weapons-(2)

2009-06-19 | 東京レトロフォーカス別室

''Dots, Square & Paisley'' Konica Autoflex T3 / Hexanon AR40mmF1.8 / Reala ACE / (C) keita NAKAYAMA

''Dots, Square & Paisley'' Konica Autoflex T3 / Hexanon AR40mmF1.8 / Reala ACE / (C) keita NAKAYAM

チベット仏教の寺院には「摩尼車」(まにぐるま)という用具が備えられている。経文が刻まれた円筒で、参拝者はこれを手で回す。すると回った数だけお経を唱えたことになる。つまり功徳を効率よく得るための道具、仏の道に仕組まれたショートカットというわけだ。

お経も唱えず厳しい修行も省略して、それで悟りが開けるのなら、こんなに楽なことはない。徳の高いお坊さんなら、そんな近道に意味がないことはよく分かっているはずだ。でも最初からシビアなことばかり言ってしまうと、人もお金もなかなか集まらない。だからお手軽そうな道も用意しておく。これはチベット仏教だけでなく、他の宗教でも太古の昔から行われてきた手法だ。この世で最初にマーケティングの概念を確立したのは「あの世の幸せを説く宗教だ」というのは、無宗教な僕の偏見か。

便利な道具を使えば、目的に素早く近づくことができる。そういう考え方は、趣味と実用の世界でもごく当たり前のこととして受け止められている。おなじ結果が得られるなら、プロセスはなるべくシンプルに、後片づけの手間も省ければさらにポイントが高い。アメリカ生まれの調理器具なんかが良い例だ。
写真の世界でも、便利な道具はいつだって歓迎されてきた。ビギナー向けの完全自動カメラはその最たるものだろう。撮影操作が自動化するたびに「冒涜だ」と異を唱えるマニアも存在したけれど、そんな修験者みたいなひとたちだって、今はピントも露出もたいがいカメラ任せ。人間は便利なものに弱いのだ。

そういう時代に、なぜわざわざ不便な道具を使うのか。これはもうずいぶん前から繰り返されている問いだけれど、即答できるひとには未だに出会っていない。旧いものを使いたくなる理由は人それぞれ、でもいまいち決定打に欠けるというか、誰もが自分自身を納得させる理由を探しているように見える。
とはいえ、他人様のことはよく分からない。だから僕自身の考え方を書けば、旧いカメラの魅力はその不便さに尽きる。ひとつひとつの操作を、その意味を考え結果を量りながら決めていく。機能が足りない場合は撮り方を考える。時には撮影を諦めることだってある。そういう場合「お前、駄目だなあ」とカメラに文句を言うこともあるけれど、それは笑って済ませられる愚痴である。

カメラを「表現の道具」と考えれば、わざわざ機能や性能が劣る機種を選ぶ人間は、端から見れば立派な変人だ。でも表現はひとつではないし、そこに至る道にもいろいろある。便利なオート機能やズームなどの「摩尼車」を回すことなく、ひとつひとつの操作に込められた意味を考えながら撮り続けていれば、もしかすると別の境地にたどり着けるかもしれない。
そういえば、「道具」という言葉はもともと仏教の用語で、仏の道に至るために必要な用具を指すらしい。

いや、柄にもなく精神論ばかり書いてしまった。趣味の写真はお仕事でも修行でもないのだから、プロセスを純粋に愉しめればそれで良いのだ。次回からはもう少し具体的に、不便なカメラたちの魅力を綴ってみることにしよう。

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▲photo「ドット、スクエア&ペイズリー」;造り手の意志がデザインに表れた機械には美醜や時代を超えた存在感がある。被写体が手にしているのは1957年発売のコニカIIIA、スクエアなデザインが戦闘的で魅力充分。

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