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曇りのトマト(3) : メイキングセンス。by 中山慶太

曇りのトマト(3)

2010-07-16 | 東京レトロフォーカス別室

Minolta AL / Rokkor PF 45mmF2 / FUJI Superia X-Tra 400 / (C) Keita NAKAYAMA

Minolta AL / Rokkor PF 45mmF2 / FUJI Superia X-Tra 400 / (C) Keita NAKAYAMA

「分かるひとには分かる」言葉がある。別の言い方をすれば、分からない人には分からない。職人の世界で使われる符丁なんかは、その分かりにくさのハードルを意図的に高くしたもの。つまり一種の暗号である。
よく似た言葉で「業界用語」というのもある。もともとは職人の符丁とおなじく、会話の時間を節約するためにつくられたのだが、極端な短縮形や文字の並べ替えを多用したため、排他性ばかりが目立つようになってしまった。
符丁にしろギョーカイ用語にしろ、上手く使えれば便利な面もある。でもそういうチャンスはまずめったにやって来ないし、逆に知ったかぶりで使うと大恥をかく。そこまではいかなくても、分かったつもりでいたのに理解が足りていなかった、ということに気づき、ある日とつぜん独り赤面をする。そんな経験は誰にでもあるだろう。

今はあまり使われなくなったが、かつて写真の世界で多用された表現で「ヌケが良い、悪い」というものがあった。用法としては「このレンズはヌケが良い」「なんとなくヌケの悪いプリント」などなど。
写真好き同士の会話なら、言わんとするところは伝わるはずだが、でも意味をちゃんと説明せよ、と迫られると即答がむつかしい。イメージはなんとなく分かるけれど実体がつかみにくい。「ヌケ」とはそういう言葉である。

先の質問に即答できるのは、たぶんモノクロで自家プリントをやっているひとたちだ。現像アガリのフィルムを一瞥して、テストプリント前に印画紙の号数を判断する。そういう習慣が身についているから、フィルムの明暗の調子を読むことができる。注目すべきは、素抜けになっている部分、つまり暗部の締まり。
そう、写真のヌケとは、モノクロの基本であるコントラストの再現性から生まれた言葉なのだ。

Minolta AL / Rokkor PF 45mmF2 / Kodak Portra160NC / (C) Keita NAKAYAMA

Minolta AL / Rokkor PF 45mmF2 / Kodak Portra160NC / (C) Keita NAKAYAMA

今の写真をめぐる状況で、そういう符丁があまり使われないのは、レンズに施された反射防止膜の性能が上がって、コントラストの再現性が高くなったから。逆光でもそれなりに締まった写真が撮れる(これについては別の側面もあるのだが、詳しくはEOS 7Dの項で続きを書く)し、白バックで色が抜けたりすることもない。
では昔のレンズはどうだったかというと、レンズの表面での反射が多いため、フィルムやセンサーに届く前に光が拡散して、暗部の充分な締まりが得られず、色の純度も低くなる。つまり、コントラストの低い、眠い写真ができあがる。これは少なくとも写真光学のうえでは、まったく正しくない。
もちろん、理論的に正しい写真、イコール良い写真ではないのだが、そういう話は「分かるひとにしか分からない」。

といっても、技術の進歩はありがたいもので、今のフィルムや画像処理エンジンを使えば、昔のレンズでもそれなりにコントラスト感のある写真が撮れる。そういえば初代のベルビアなんか、戦前のエルマーでも暗部の締まりが出ていてびっくりしたものだけど、流石に手に負えないレンズもあった。
どういうものかというと、反射防止膜が劣化して白っぽくなったレンズ。つまり曇ったレンズである。

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▲photo01:この連載の第一回目に貼った画像のバリエーション。黒い服の調子は綺麗に出ているが、髪や瞳の暗部は浮いている。部分を観察すれば欠点も目につくものの、画面全体を眺めれば潮風を感じさせて悪くない(というか狙い通りのトーン再現になっている)。このバランスは薄曇りのロッコールと空模様とフィルムの相乗効果で、おなじレンズでも強い日差しや軟調のフィルムとの組み合わせだとなかなか上手くいかない。

▲photo02:こちらは連載二回目とおなじ条件。上との違いはフィルムと露出設定のみ。どちらの画像も暗部(黒い服)を基準にトーンを出しているのだが、この条件だとハイライトに調子が残り、ピント面もいまいち判然としない。なぜこうなるのかは次回にて。

制作協力 脊山麻理子

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