Konica Autoreflex T3(3)

2011-05-07 | 東京レトロフォーカス別室

Konica Autoreflex T3 / Hexanon AR50mmF1.7 / RealaACE / (C) keita NAKAYAMA

Konica Autoreflex T3 / Hexanon AR50mmF1.7 / RealaACE / (C) keita NAKAYAMA

正式名称は長いので「T3」と呼んでいる。
品番に数字を付けるからには、もちろんTやT2もある。そう考えるのが普通だけど、中古カメラ屋さんではT3しか見かけない。シュワちゃんの映画だって「T4」までつくられているのに、他のカメラはどこに行った?

じつはこのカメラ「オートリフレックスT3」は、コニカがもっぱら輸出向けに展開したシリーズのひとつである。海の向こうではTやT2、T4もちゃんと存在する。それらは(輸出専用機のT4を除けば)日本でもおなじものが売られたのだが、別の名前がついていた。
なぜ輸出向けと国内向けで名前を変えたのか。そしてなんでまた、「T3」だけ世界共通としたのか。それを考えていくと、コニカ製一眼レフの別の姿が見えてくる。

シリーズ最初の「オートリフレックス」は、1965年の発売。これは日本では「オートレックス」の名で売られた。反射ミラー内蔵を示す”reflex”を縮めて”rex”としたわけだが、いささか意味不明気味ながら、これは悪くないネーミングだったと思う。レックスは「王」を意味するラテン語で、おなじみの肉食恐竜のイメージも重なって印象が強いからだ。
それになにより、短い和名の方が覚えやすく、呼びやすい。おかげで日本の中古カメラ市場では、今でも「オートレックスT3」という誤用がまかり通っている。そんなカメラはありません。

輸出用と国内用で名前を変えるのは、工業製品にはよくあることだ。カメラで有名な例は、ミノルタ(現ソニー)のαシステム。これは北米ではダイナックス、欧州ではマクサムの名で売られた。命名者はたぶんアニメオタクだな。
そういえばあのEOS KISSも、輸出向けは違う名前だ。

そんな風に名前を変えるのには、いくつか理由がある。ある名称が特定の仕向地で、商品にあまり相応しくない印象を与える場合。かつて日産のワンボックスカー「ホーミー」の名称が、沖縄で使えなかったのは都市伝説まがいの実話だが、そこまでではないにせよ、KISSもカメラの名称としては「如何なものか」と判断されたのだろう。
欧米では皆、路上で接吻しているから問題無さそうだが、カメラは化粧品のようにムードで売る商品ではない。そういうイメージ戦略がぐちゃぐちゃになっているのは、日本の特殊事情なのだ。

もうひとつは、使いたくても使えない、つまり商標権を別の企業に押さえられてしまっている場合。やはりクルマの話で恐縮だが、かつて仏ルノーが小型車「クリオ」を日本に輸出する際、ホンダの販売店名とバッティングして、「ルーテシア」の名に変えざるを得なかった。クルマのように世界のあちこちで造られ、そこらじゅうで売られる商品には、そんな話はごまんとある。

Konica Autoreflex T3 / Hexanon AR50mmF1.7 / RealaACE / (C) keita NAKAYAMA

Konica Autoreflex T3 / Hexanon AR50mmF1.7 / RealaACE / (C) keita NAKAYAMA

ではカメラはどうかというと、そういう例は(たぶん)多くない。これは商標のような知的財産が、法的にきちんと保護されるようになった時代に、カメラ市場のほとんどを日本製品が占めてしまったためである。日本の企業はネーミングの際に広告代理店などに委託して、きちんと調査をしてから決めるのが通例なのだ。
また一眼レフの機種名のように「数字とアルファベットの組み合わせ」は、原則として商標登録ができない(固有名詞と見なされない)ので、トラブルの種になりにくい。

ただし数字とアルファベットでもトラブルになる場合はあって、オリンパスの一眼レフに独ライカ(ライツ)社がクレームをつけ「M-1をOM-1に変えさせた」のはよく知られた話。M型ライカと紛らわしいから、ということなのだが、ライカM1は欠番だし、もしライカが訴訟を起こしても勝てる見込みは薄かったはずなのだが、オリンパスは潔く変更に応じた。
まあ、どんな分野にも不可侵の領域というものがある。オリンパスはそれと知らずに足を踏み入れた、ということか。

いや、オリンパスOMではなくコニカ・オートリフレックスの話だった。この名前がなぜ輸出専用で、またなぜ「オートリフレックスT3」の機種名だけが万国共通とされたのか。
僕が山のような資料にあたり、当時の関係者に取材して得た情報をもとに出した結論、じゃなくて勝手な想像を書けば「深い意味は無い」。はいはい、つまんないオチでごめんなさいね。

もちろん、確かな裏付けなどはない。ただしこの想像にはちょっぴり根拠があって、それはトップカバーに刻まれた機種名の刻印がヒントになっている。今回はカメラの話、ぜんぜん書けなくてすみません。

(この項続く)

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▲photo01:ヘキサノンAR50ミリF1.7で。かつて多くの一眼レフボディに「標準セット」で売られた、今風に言えばキットレンズ的位置づけの製品。予算に余裕がある場合はエフイチヨンやイチニの大口径を、そうでない場合はとりあえずこちらのイチナナを。そういう販売上の要求から、小口径の標準は戦略的な値づけがなされていた。
このレンズもそういうお手頃っぽい玉なのだけど、描写はお手頃なんてものではない。実はこれ、あの「AR40ミリF1.8」とおなじ下倉敏子さんの設計で、いっけん普通のダブルガウス構成ながら描写はかなり尖ったもの。ただたんに「ピントが鮮鋭」なのではなく、絞り開放付近に独特の神経質さがある。いわば天才タイプのレンズで、使いこなすのはむつかしい。
撮影場所は広い窓から光が入るレストラン。自然光をメイン光源に、天井からの白熱光がトップに入るよう位置を決め、瞳のキャッチは窓の映り込みを使っている。この力強いトーン再現、素晴らしい色乗り。これがヘキサノンARレンズの実力である。

▲photo02:窓からの日差しが弱まったタイミングで、店の灯りをいくつか落としてもらう。上の画像では縦横比率を活かせていない気がしたので、撮影位置を変えた。最近は4対3で撮ることが増えたため、3対2のアスペクト比がパノラマっぽく感じる。もっとも、こちらに慣れるとあちらが「寸詰まり」に思えるのだが。
今回の撮影はすべてマニュアル露出。カメラの電池も抜いて撮っている。T3は(というよりコニカARマウントのカメラは)微妙な露出設定には向いていないため、シャドー側の髪は最初から潰すつもりで露出を決めた。光の条件に敏感に反応するのも良いレンズの証。

制作協力:脊山麻理子

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