Tea Break
雑誌の仕事でご一緒させていただいた方からのお誘いで、CP+(カメラ&フォトイメージングショー)に出向く。恥ずかしながら、カメラショーなるものはこれが初体験である。
今年から会場が横浜に移ったこともあるのか、会場の人出は国際色豊か、というより妙にアジア色が濃い。中華街のひとたちが大挙して押し寄せて来ている、わけじゃないか。
入り口で待ち合わせをした編集のアオキさんから、いきなり「これ使ってください」と、某社の新型カメラを手渡される。ちょっと試したけど、取説なしだと操作がままならない感じだったので早々に返却。自前のカメラを首から提げる。広い会場でフィルムカメラ使ってるのは、たぶん僕だけだろうな。
午前中に山本まりこさんのセミナーを拝聴し、午後は亀山ののこさんのトークショー。どちらも盛況で、特に山本さんのセミナーでは年配の女性が熱心にメモを取って聴き入っている。ネット時代でも写真関係の雑誌が売れるのは、この趣味がこういうひとたちに支えられているからだろう。
各社のブースで挨拶回りに忙しいアオキさんと別れて、しばし独りで観てまわる。主要メーカーはそれぞれに力が入った展示で、でも僕が面白いと思ったのは周辺機器メーカーや小規模な輸入商社の方だ。復活したポラロイドのコーナーに飾ってあったランドカメラは、あのウォルター・ドーウィン・ティーグのデザインになる最初期型。ミントコンディションの展示機はため息ものの美しさだったけれど、誰も興味を示していなかった。
カメラショーの華といえばコンパニオン。どのブースでも周囲に人垣をつくっていて、なんだか撮らなくちゃいけないみたいな強迫観念を覚える。でも誰にでもおなじ笑顔を振りまくお嬢さんを撮るのは、ちょっとね。今日びフィルムカメラを使っていると、興味の薄い対象にレンズを向ける気になれない。
でもひとりだけ、これは撮らずにいられない、という娘さんがいた。お隣の国の民族衣装に身を包み、広い通路でパンフレットを配っている。周囲に誰もいなかったので、声をかけて撮らせてもらう。
彼女は僕が構えたカメラを観て「それ、可愛いですね」という。いやこんな古カメラよりもあなたの方がずっと可愛いですよ、などと話しながら二、三回レリーズしたところで、ファインダーがやけに明るく光る。振り向けばそこには何本ものレンズ。え、会話も何も無しでいきなり撮るのかい。
ここではそういうのがお約束らしいけど、それって写真撮影というより昆虫採集みたいだゾ。っていうか、写真文化のど真ん中にあるカメラショーで、人物写真にいちばんたいせつな「被写体と撮り手の関係性」が軽んじられているのは、イカガなモノか。と、そんなことを考えたのも、あの広い会場で僕だけだろう。
早めに会場を後にして都内に戻り、モデルのマユミさんと小一時間、お茶をする。別れ際に十分ほど時間をもらって、繁華街の路上で撮影。人口密度は先ほどの会場よりもずっと高く、でもカメラを構えれば周囲はまったく気にならない。短い会話を挟みながら、この日用意したフィルムを撮りきって終了。
やっぱり僕にはこういうやり方が性に合っている。
Special thanks to MAYUMI.
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