docomo Pro Series L-03C(15)

2011-05-23 | 東京レトロフォーカス別室

docomo L-03C / Pentax 3X Optical Zoom 6.3-18.9mm F3.1-5.6 /  6.3mm F3.1 1/80sec. ISO64  / (C)  Keita NAKAYAMA

docomo L-03C / Pentax 3X Optical Zoom 6.3-18.9mm F3.1-5.6 / 6.3mm F3.1 1/80sec. ISO64 / (C) Keita NAKAYAMA

雨の中で写真を撮って戻ると、レンズに染みができていた。
水分が揮発して雨粒の不純物が残っただけなのだが、この時節柄、なんとなく心穏やかでないので、とっとと掃除する。
小さな前玉の端の方は、四角い枠に邪魔されて掃除がやりづらい。枠はフード代わりのフレアカッターだが、ハレ切り効果はほどほどだろう。
それでも、これが写真レンズを知り抜いたひとたちの設計と思うと、有り難みを感じる。カメラ好きとは単純なものである。

ドコモL-03Cが積んでいるレンズは、今のところケータイでは唯一の沈胴式光学3倍ズームだ。
カメラを起動すると、厚さ16ミリほどのボディから二重の筒が伸びてくる。起動時に突出する鏡胴の長さは約17ミリだが、レンズの背後にはイメージャや液晶パネルが置かれているため、収納時のボディ内部には、厚紙を差し込む隙き間もないはずだ。
鏡胴の伸縮とズーミング、ピント合わせにともなうレンズの移動は、すべてモーター(DCモーターとステッピングモーター)で駆動される。その作動音を聞くたびに、これが電気で撮るカメラであることを実感する。遊んでいる指は、そのうち退化してしまいそうだ。

もちろん、すべてを電気に頼っているわけではない。このカメラのレンズは、光の屈折だけで像を得る「光学ズーム」なのだ。電気信号をもとに像を拡大する電子ズーム(L-03Cも併用している)に比べて、画像品質は間違いなく高い。
光学ズームを積んだケータイカメラは他にもあるが、そちらは光路をボディ内で折り曲げるプリズム内蔵型。プリズムによる画像のダメージは無視できる程度だろうし、ボディの薄さを損ねない利点もあるので、優劣はつけ難い。ただし指の写し込みがちょっと怖い、という実用上の問題よりも、ケータイ然とし過ぎた見た目が、個人的に抵抗がある。
やはりカメラはレンズが出っ張ってナンボ、という僕のような人間は、L-03Cの沈胴レンズに「御威光」を感じるのだ。

焦点距離はフルサイズ換算で約35〜105ミリ相当。これは数年前のコンデジで標準的なスペックで、今はもっと高倍率が当たり前になっている。L-03Cユーザーにも、それを望むひとが多いだろう。

docomo L-03C / Pentax 3X Optical Zoom 6.3-18.9mm F3.1-5.6 /  6.3mm F3.1 1/80sec. ISO64  / (C)  Keita NAKAYAMA

docomo L-03C / Pentax 3X Optical Zoom 6.3-18.9mm F3.1-5.6 / 6.3mm F3.1 1/80sec. ISO64 / (C) Keita NAKAYAMA

とはいえこのレンズ、スペックは平凡でも、実写での描写力はけっこう高い。絞りが常時開放(L-03Cの絞りはNDフィルターだ)であることを考えれば、もう充分以上に立派な写りといえる。
以前のデジカメでは、イメージャ側がボトルネックになって、レンズ性能が十全に発揮されないことも多かったのだが、さすがに最近のメガピクセル機ではそういうことは少なくなった。

L-03Cでも、ときおり「ハッとするような写真」が撮れることがある。撮れない場合もあるのだが、それはレンズに責任がないことが多く、やはりイメージャのサイズによる性能限界、それと撮る側が無造作にレリーズしていることが原因だろう。
コンデジやミラーレス機が本質的に抱える問題として、カメラの保持が不安定になりがち、ということがある。微妙なブレを味方につけるスナップも悪くないが、それはもっとチープなカメラで楽しんだ方がいい。コンデジでも丁寧に撮れば、驚くような画像を出してくれる。

そういえば昔、「トリウムレンズ」というものがあった。光学性能を上げるために、硝材に“ちょっと危ない”元素を添加したレンズだ。
これは戦後にアメリカで発明された(ことになっている)技術で、そういう混ぜ物をした硝子は高い屈折率を示したため、写真用レンズに採用するメーカーも現れた。有名どころとしてはコダックの大判用エクター(コマーシャルエクター)やライツの初代ズミクロン50ミリ。そして日本では、ペンタックス・スーパータクマーがこの種のレンズとして知られている。

もちろん、そうしたレンズを常用しても、人体への影響は無視できるレベルである。それはさておき、昔のレンズ設計者はいろんな橋を叩かずに渡っていたものだなあ、と、雨粒の痕を拭きながら思い出していた。
L-03Cの鏡枠に刻まれた「PENTAX」の文字は、伊達じゃない。そう胸を張れるような写真を、僕はいつか撮れるだろうか。

(この項続く)

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▲photo01:「ぬるいブロック塀の上の猫」。さいきん仲良しになった、近所のサビ猫。この柄の猫は雌だけらしい。撮影距離はマクロで最短付近、つまり逃避距離はゼロメートル。ということは飼い猫だな。
フルサイズ換算約35ミリの広角端で撮影しているが、コンデジでもこれだけ寄ると被写界深度は浅く、向かって左側のヒゲの先端は深度から外れている。
背景のボケ量は望遠側で撮ればもっと多くなる。広角で寄って撮る方がずっと面白いけど、動く被写体相手では失敗も増える。いちばんの問題はレリーズタイムラグ。コンデジで猫写真はむつかしい。

▲photo02:上の画像の25%を切り出したもの。画像処理エンジンの輪郭強調はヒゲのエッジで確認できるが、ほとんど気にならない。動物写真がカメラやレンズのカタログ作例によく使われるのは、毛並みの描写で解像感を伝えやすいためだろう。向かい側の建物に沈む夕日がいいタイミングで瞳に映った。

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